記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

感動を共有したい四十路映画記録 #0012「護られなかった者たちへ」

ネタバレが苦手(私も同じです)な方は閲覧を控えていただき、作品を楽しみにされている方は、是非、その作品をご覧になってから、私の感想にコメントを寄せてくだされば嬉しいです。もちろん、記事を途中まで読んだうえで、作品に臨んでいただいてもいいです。

(使用可能なものを検索して写真を使わせていただいております。)

私も大好きな「るろうに剣心」で、主人公を全力で演じきってくださった、佐藤健さん。同じ人間が演じているとは思えないほど、鬼気迫る顔つきを映す広告だけで目を見張るものがありましたが、東日本大震災を題材にしているとあって、彼を含めて出演されている方々の演技は言葉を失わせます。同じ日本人として、当事者意識について今一度考えさせられ、何か感想を言おうにも、この悲しみは、私の言葉では表現しきれる日が来ることは無いでしょう。

原作があることは、拝聴後に知りました。原作者の中山七里さんは、以前にも取り上げた、有隣堂のYoutubeにも出演されたことがあります。何本もの作品の連載を同時並行されているという、その壮絶な仕事ぶりには驚きなのですが、ご本人はとても気の良い人柄、懐深いおじさまの印象ですが恐れ多い、威厳あるミステリーの名手です。映像で積み重なる悲しみはどこまでも悲しく、ミステリーらしい読めない展開には感嘆いたしました。ただ、すみません、私にはこの物語を面白かったとか、感動したとか、他の作品のようにはつらつと表現できる言葉を持っていません。震災を題材にした作品には、私なりの覚悟を持ってしか臨めないため、何度も拝聴できるような作品ではありませんが、だからこそ、いつか、中山さんの小説を読んでみたいと思いました。


どこかの港町、静かな海に、うなだれる。港町は信じられない量のがれきで埋まる。避難所になっている学校の体育館には、未だ会えぬ家族を探して、気の休まらない日々を必死に過ごす人々で溢れている。被災した青年(佐藤健)に家族はなく、感情のなくなったように話さず、呆然とひとりで居るところを、同じく家族と逸れた少女、かんちゃん(石井心咲)と、何かと世話を焼いてくれるどこかの優しいけいさん(倍賞美津子)。まだ許可は出ていないけれど、けいさんの家で一緒にご飯を食べ、同じ床で川の字になって寝る。かんちゃんは、まだ会えぬ家族が心配で、別れる前に母にかけた言葉を後悔していると話すと、けいさんは、こんな風にかんちゃんを抱きしめられて嬉しいと話す。背中越しにそれを聞いていた青年は、気を許すことができた二人の前で、この理不尽な悲しみに、堪らず家の外まで飛び出す。後ろからけいさんが抱きしめてくれるが、彼は「生きていてよかったのかな」と大粒の涙を流す。

*


当時の被災者の様子、環境を真摯に描いています。2011年当時と2020年の現代を行き来しながら、ある事件を追いかける青年と笘篠の視点で進みます。とは言え、東日本大震災という事実と、当時の現実や社会問題を下地に物語が進むため、視聴者としては、悲しみを見届ける勇気が必要だと思います。でも、その中の良かった出来事やその終末は、これからの生活の糧になるはずです。

この記事が参加している募集