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伝えたら壊れちゃうじゃないかと思ってin古書店episode2

先日書いた例の古書店に私は通う。
幸いにも職場から近い古書店は、仕事が早く終わればお邪魔することができる。

その日も閉店30分前に駆け込むように古書店に入った。
古本を平日に見にくる人なんて、時間に余裕がある人だと思う。
そもそも、古本なんて沢山の本棚から自分が好きな本を探し出すのだから、
時間はそれなにり必要だしちょっとした宝探しだ。

一方で私といったら
閉店まで30分ある!駆け込み入店行けるか?いや迷惑か?
でもお店は開いていることだし一応平然とした感じで行ってみるか!
と、落ち着いた顔して内心では
やったー!セーフ!間に合った!嬉しい〜!の感情で入店をした。

普段の通り隈なく黙々と店主のセンスが光る本棚を拝見する。

店内には私と店主の2人。
そこには会話もなく小さなBGMが流れる。

ガラガラっと扉を開く音がした。

私より遅い時間にお客さんが入店した。
素敵な格好をしたおばさまだった。

私の心の声で、
へ?おばさま、もう閉店も間近で本探すの難しくないですか?私も今必死ですよ?
と思ったのだけど、
入店したおばさまはすぐさま店主にこう言う。
『あの〜〇〇さん裁縫の本あるかしら?近くの大きな本屋に行ってもないと言われて。』

古本屋で本のタイトルを言って見つけ出すなんて絶対に無理だよ〜と思いながらも背中で二人のやり取りを聞く。
店主も少しびっくりしたような感じで、えーと、と言いながら本棚を探す。
あ!と店主が言う。
『ありました』
いや、あるんかい!と背中で聞いていた私は思わず心の中でつぶやいた。

おばさまは大満足で、店主とこの著者のことやこのお店にこれて良かったことを話、またくることを告げて10分程度でお店を出た。

私は何度かこの古書店に通い会話なんて二言程度が精一杯というのに、おばさまは10分で私を超えた。

なんだよ。と少し拗ねながらも本棚を眺めていく。
閉店もギリギリになったところ1冊の本を見つけお会計をする。

いつも寡黙な店主が、
『よく見つけてくれましたね、ありがとうございます。』
『僕も仕入れ頑張ります。』
と言ってくれた。

それに対し私は、『はい』の二文字しか答えれられなかったけど、
確実に店主に近づけた気がした。

お店をでる。
閉店の時間で、外は昼から夜に変わろうとしている。
あぁ〜今日も古書店で素敵な時間を過ごしたなと思う。
店主があんな風に喋るなんて珍しいな。
おばさまのおかげで、喋れる雰囲気がお店に残っていたのかもしれないな。
おばさまありがとね。

今日も私は本を大事に抱いて家路に着く。


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