雑文


 机の引き出しを開ける。そして写真の束が入っているクリアファイルを取り出す。写真は様々な瞬間を切り取っている。中学校の同級生AやBやCとプールに行った時の写真。Aとは席が隣同士だったことがあり、何度も教科書を見せてもらった。教科書を見せてもらうためにわざと忘れ物をするほどであった。Aは昔おさげで、2年になったばかりぐらいの頃にショートになった。若干歯が出ていて、矯正の器具をつけていたが、巨乳なことで有名だった。

 彼女はセパレートではないものの、背中の大きく開いた水着を着ていた。写真からはそのことはわからない。写真を見て、当時の記憶が呼び起こされたからそのことに言及したのである。


 写真にはBも写っていた。そもそもみんなでプールに行こうと言い出したのは彼女だった。背が高く、髪も夏休みには茶色に染めるような活動的な子であった。家が金持ちで、彼女の部屋にはちょっとした台所までがついていたから、僕らはよく彼女の家で遊んだものだった。


 さらにCもその写真には写っていた。Cとは小中高と一緒だった。一定期間彼女とは付き合っていたこともあった。二人きりでプールやカラオケに行ったこともあった。しかしその時の写真は残っていない。プリクラは撮ったけれど、別れた時に勢いで捨ててしまった。写真は捨てたが、思い出は捨てられなかった、というわけである。

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 「Cさんと同じ学校だったんだってね?」とDは聞いた。僕は頷き、彼女の手の上に置かれていたお茶を取って一口飲み、また元のように置いた。


 Dとは付き合わなかった。けれど好きだ、とは言われた。僕は何も言わずに彼女にキスをした。高校時代僕が付き合っていたのはCだけだった。

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