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新たなるテレコと書き変わる記憶


20221020

木曜日



午前中。

 パートさんが深刻そうにNを呼びに来た。
今現場から上がってきた印刷だが、図面袋(その製品に関わる情報が1つの袋に入っている)と印刷物がイコールになっていないと。
別の製品と入れ替えるのはテレコと言って重大なミス扱いになる。

ん?テレコ……?


 印刷したのはニューキム。入社して3、4年くらいの若手。

昨日は昨日で、ニューキムの印刷のバツ印が多過ぎるからどうにかならないのかとニューキムの先輩に相談したばかり。

今日はテレコ。

テレコ……?
あれ……デジャヴ……?


 ニューキムのミスはほぼ毎日聞く。
後工程を見せたりして勉強はさせているのだが、全く意味はない。
新人が慣れてきた頃になる暗黒期だと良いのだが、ちょっと様子が違う気がする。

次回1つのミスを直して、と言うと、1つのミスを直さずにまた上げて来る。
そういう学習が難しいタイプなのか、定時で帰りた過ぎて雑なのかは本人にしか分からない。

そんなだからニューキムは加工・検査のパートさんから反感を買っている。
検査員は神経すり減らしてやってるのに、ニューキムはそれに甘え過ぎていないかと。

パートのAさん「(ニューキム)どこ見てんの?目悪いの?」
パートのBさん「ねぇ!あたしが(ニューキムに)言いに行こうか!?」


このように、思った以上に反感をお買い上げしている。





 ニューキムがテレコした事を担当営業の蛇に報告したN。

蛇「ニューキム君は素直に聞いてくれた?」

N「聞いてくれるけど、それが続かないんだよ。
素直には聞いてくれるんだけど、すぐ元に戻っちゃう。
だからオールドキムさん(ニューキムの上司)がちゃんと指導してるのか分からないんだよ」

蛇「ふーん、理解してないんだろうな」


そう言って蛇は去る。
いつもなら執拗にミスを追求する蛇があっさりしていたものだから、
温度差が違い過ぎて消化不良を起こしたNがこちらに詳細を語り出す。

N「とんでもない不良だって言ったらオールドキムさん半ギレしちゃって。
『類似があったの?こんなことってありえる?』って言うから、いや、あるんだけど……って。

地色が白の製品が緑で上がってるし、地色が緑の製品が白で上がってるし。
入れ替わってるから検査で気が付いた」


もしかして、印刷が、入れ替わってるー!?

ってやつ。
そんなにちゃんと入れ替わってたのか。
それはどこ見てんだと言われても仕方ないやつ。

弊社は色ごとに一版ずつ印刷していく。だからこういう色間違えは起こりうる。滅多になかったのだが。
もちろん、一版ごとに製品番号も印刷されるし、初回サンプルもある。

しっかり教育なされよオールドキムさん。



O「じゃあ製品図番見てないんだね」

わたし「昨日の天気娘さんと同じじゃん。『新』って書きゃ良いんだよ(冗談)
製品図番に拒否反応出るなら図面袋と印刷の版全部がイコールになるよう、同じシール貼っとくとか」

O「そうだよ笑」

N「オールドキムさんの言い方が嫌だったから蛇さんに言ってやったの。オールドキムさんすごい高圧的でさ」

でも蛇の温度は上がらなかった。

わたし「印刷部署内部の問題なのに、なんで見つけた検査が恨まれるねん。
検査されたくないなら『検査不要』って書いて上げて来い」

N「だから蛇さんに言ってやったの!」

その話は聞いたよ。

蛇はオールドキムと仲良さそうだからしつこくしたくないんじゃないの。






昼前。

 今度は社外不良の報告。お客さんから連絡があった。製品サイズが違うと。
醤油おじさんが金型で抜いている製品だ。

その製品の担当営業は鳩おじさんで、担当業務はボス。
鳩おじさんが醤油おじさんの事情聴取に行ってきたという。


ボス「コンマ1から2大きいよ。絶対大きい。なんで新しい型使わないの?」

鳩「面倒くさいから。新しい型だとピンを外さないといけないんだけど」

ボス「だから楽したんだ」

N「なんで型作り直したの?」

鳩「サイズ変更あったから」

ボス「え、じゃあダメじゃん。馬鹿じゃないの」

鳩「やばいね。これで自分が悪くないような言い回しをしてるから、これ再製作なるよって言ったんだけどさ」

ボス「全部パーだよ」

N「普通に考えておかしいじゃん」

ボス「新しい型作ったのにそれで抜いてないんだよ。ピンを外して型を差し替えるのが面倒くさかったんじゃない?」

N「面倒くさいって問題じゃないじゃん」

わたし「天気娘さんは製品番号の確認が面倒くさいから古い型に『新』って書いて間違えて」

N「そう笑」

天気娘のプレスと醤油おじさんの金型は仕組みが同じなので同じ部署。
同じ部署内で何やってるんだ。

ボス「醤油おじさんが大きさ測ったら大丈夫だったって言うんだって笑」

O「お客さんからも違うって言われてんじゃん!?」

N「ねえ!大丈夫ー!?」

わたし「全部面倒くさいが不良になってる」

O「そう、もうダメだよ」

訳が分からねえことばかりだ。


鳩「自分は悪くないってゴチャゴチャ言い訳ばっかりになるから面倒臭いんだよね」

それでこそ醤油おじさん。






午後。

 恒例のプレスのお手伝いに来たよー。醤油おじさんはどんな感じかなー?


早速、醤油おじさんは怒っていた。
しかし自分の不具合についてではない。昨日の天気娘のテレコについてだ。

醤油おじ「型を取っておけってさ、指示する方がおかしいじゃん。そんなに仕舞う場所もないしさ。
自分達(検査部門)は報告書出してないくせに天気娘さんにばっかりに書かせてるじゃん。俺次の内部監査で指摘してやろう」

やってるやってるぅ。
自分が攻撃(さっきの不具合)されたからめちゃくちゃ針逆立てておりますな。
自分のネタで攻撃すると墓穴掘る可能性があって危険だから、天気娘のネタで攻撃するみたい〜。

しかしね、醤油おじ君、営業は「新しいの来たら捨てて良い」と言ったらしいんだよ。
天気娘の勘違いなのだよ。
でもその勘違いのおかげで正しい型を捨てずに済んだんだよ。
捨ててたら殿(社長)がもっと怒り狂っていたんだよ。

「製品図番をちゃんと確認していれば・・・・・・」という言葉は一切出てこない。
そこに気がつかないと今後も同じ原因の不具合出るなこれ。


 手伝いに来たおかげで、ISOの内部監査係の醤油おじさんが、職権乱用して品質係を責めて憂さを晴らす計画をキャッチ出来た。
実はわたし品質係の1人なのよ。
戻ったら広めよう。




 醤油おじさんは自分の不具合については型屋のせいにしていた。
どういうことだ。
古い型で抜いといてなんで型屋の寸法が狂ってると言うのだ。


「醤油おじさんはなんであんなに型屋に怒っているんですか?」と、天気娘に質問した。

天気娘も「(お客さんからの指摘だろうと社内の)検査から攻撃(指摘)された!」と感じるタイプのため、完全に醤油おじさんの味方として回答してくれた。


『実は醤油おじさんは新しい型で抜いたらしい』

は?

『しかし型屋が作ってきた新しい型の寸法が大きかったらしい』

古い型の方で抜いたからでしょ?

『その事をちゃんとお客さんに説明して進めていたが、今になってお客さんが指摘して来た。
つまり、事情を営業の鳩おじさんが覚えてなかっただけ』


鳩おじ&ボス経由だけど、さっきまでは『大きさ測ったら大丈夫だった』って言ってたらしいじゃん?
自分が悪くないようにするために話がねじれてるよ完全に。
自分の発言と整合性を取る事もしてくれないからすぐ気がついちゃう。

もし仮に『寸法違うけど了承を得ていた』という話が事実だとして、
今回はこのまま納品しよう!という流れだったと思うけど、
寸法狂ってるんならその後から型屋に戻して直してもらわん?それやってないよねー?


 何もかもお客さんから指摘されてから初めて気がついて、自分は悪くないという根回しに必死で全く仕事が手に付いていない。
手伝いに来ているわたしの方が生産性が高い。

この後醤油おじさんは、根回しの範囲を広げるために、安全地帯に人を連れ込み、その人の時間を"俺の愚痴を聞く時間"に変更する予定。
いつもこのパターン。今日はもう仕事しないかもしれない。

事情を知らない人はねじれた話しか聞かされないから「醤油おじさんは巻き込まれた被害者」と信じ込む人は残念ながら小数いるが、醤油おじさんの為に立ち上がろう!という気概のある人はいない。



 醤油おじさんは通りかかったボスを捕まえて「俺怒ってんだ」と言って事情を説明。
鳩おじさんの話と全く違うアナザーストーリーを聞かされるボス。
どっちの方が面白かったかクリアしたらお話聞かせてください。
あ、面白かったらでいいです。




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