連載小説 トビの舞う空(73)
「江島早雲美術館に、ぜひトビの舞う空を展示させて頂きたいと考えております」
「うん、それなら僕はこの絵を喜んで寄贈するよ。トビの舞う空はもっと沢山の人に見てもらうべきだ。多くの人達がこの絵から元気をもらって欲しい、と考えていたんだ」
トビの舞う空を寄贈する、と口に出してしまった舜太は、鬼の形相をしているであろうかあちゃんを恐る恐る見た。
だが、かあちゃんは意外にも穏やかな表情だった。全身全霊かけて猛反対されるだろうと覚悟していた舜太は拍子抜けした。
「舜太様、それは素晴らしいお考えです。ですがこの絵は早雲先生が舜太様に差し上げた物です。寄贈して頂く訳には参りません」
「でも三宅、僕は」
「舜太様、実は先程お母様にご提案させて頂いたのですが、トビの舞う空を、江島早雲美術館にレンタルしてもらえないかと考えております」
「レンタル?」
「そうです、この絵をお借りするという事です」
「なるほど、レンタルか」
三宅の提案は、舜太にとってまさに目から鱗だった。
つづく
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