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連載小説 トビの舞う空(80)


「舜太、江島早雲は絵だけで食べられる様になったのが、四十歳を過ぎてからだったんだって」

舜太とカレンちゃんは、江島早雲美術館のトビの舞う空の前に立ち、見上げていた。

「私は舜太の絵が好き、舜太の絵が好きな事は、世界中の誰にも負けない自信があるの。私はいつも舜太の絵から元気を貰ってるんだ。舜太の絵は素晴らしい。きっとみんなの心に届く日が来るから、大丈夫、焦らないで」

しんと静まり返った開館前の展示室に、カレンちゃんの声が反響した。

「舜太様!私も応援団の一人ですよ」

薄暗い館内に、二人切りだと思っていた舜太とカレンちゃんは、ビクリと振り向いた。薄暗い展示室の中で、黒づくめの三宅は保護色で全く見えなかった。三宅は二人の真後ろに立っていた。

「びっくりしたなあ、もう、三宅そこにいたの?」

「申し訳ございません、ずっと後ろで聞いておりました。舜太様、やり続けるのです。きっともうすぐです、諦めたら終わりです。早雲先生にもそんな時がありました」

ランボーと小森先生は、時折海岸で描いている舜太の所にコーヒーを持ってやって来る。この前はウッチーが遠征の合間にひょっこり顔を出した。皆、舜太の絵が見たくてやって来るのだった。

「お前の絵には力がある。お前の絵を見ると元気が出る。見に来て良かった!ありがとう」

舜太の絵を見た皆が、帰り際に必ずそう言うのだった。


つづく

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