【連載小説】少年時代 後編#1
三上山は春の訪れと共に鮮やかな緑で覆われて来る、
ポンタは五年生になった、
今日は始業式、五年生はクラス替えがある。
「また一緒のクラスだったらええなー、」
ポンタはようちゃんとのいねめ君と並んで歩いている、
「ポンター!」
奈々が後ろから追いかけてきた、
「今日クラス発表だね、またみんなと同じクラスだったらいいなー」
そう今日はクラス発表の日、ポンタ達はドキドキしながら教室に向かった。
五年生の教室は三階、四年生までは二階だった、ポンタはなんだか少しお兄さんになった気がした。
教室前にクラス発表の紙が張り出されている、その前には生徒たちが群がりざわついている。
ポンタ達は五年一組の扉に貼ってあるクラス名簿の前に立った、
担任は房子先生、
名簿の上から順番に見て行く、
ポンタの名前がある、
ようちゃん、奈々もいた、
のいねめ君がいる、
そして、
はざま君もいた。
「やったー!!みんな同じクラスだー!!」
ポンタ達は手を取り合って喜んだ。
六年生のクラス替えは無い、だからポンタ達は卒業まで同じクラスだ。
◇
サッカー部には四年生の新入部員が二十五人も入って来た、
県大会優勝の実績でサッカー部は入部希望者が増え、野球部より大所帯となった。
四十人もの部員を野木先生一人では大変だろうと学校は配慮し、房子先生もサッカー部の顧問に加わる事となった。
「房子先生はサッカーやったことあるん?」
ポンタが房子先生に聞く、
「私はずっとバレーボールやっててん、強かったんやで、高校のときはインターハイまで行ってん、」
房子先生が答えた、
「インターハイ?」
「インターハイは高校生の全国大会、県で優勝した学校が出れんねん、」
「房子先生すごいやん!」
「でもな、秋田県までわざわざ行って、一回戦負けやったんやけどな、ハハハ、、」
誰が見ても美人の部類に入るきれいな顔の房子先生は普段はやさしい教育熱心な先生だ、
でも怒ると怖い、恐怖の『ももバン』が待っている、
あと少し天然ボケなところもあり、よくポンタ達にツッコミをいれられることがある。
房子先生が参加しての初めての練習、
野木先生はサッカー初心者の四年生を担当し、房子先生は五年生を見ることになった。
ポンタ達五年生は野木先生に今日の練習メニューを聞き自分たちで練習を始めた、
サッカーの知識の無い房子先生は初めは黙ってポンタ達の練習を見ていた、
まずはパスを二本繋いでからのシュート練習、
出し手がパスして走り出す、受け手はボールをシュートしやすい位置に出す、そしてシュート、
ポンタ達はやり慣れた練習をスムーズにこなしていた。
ポンタの番が来た、
ポンタがはざま君に出す、はざま君は受けたボールを丁寧にパス、いいボールだ!
『決めたるで!』と力んだポンタは見事に空振り、
すると黙って見ていた房子先生が突然叫んだ!
「おらーっ!ポンターっ!!ちゃんとアタックせー!!」
ドスの利いた大声が校庭中に響き渡った、
隣で四年生のパス練習を見ていた野木先生が何事かと驚いてこちらを振り返る、
新入部員達も『ビクリ』とパス練を止め声の主を見た、
皆に注目された房子先生はキョトンとしている、
「せんせ、そんな大声ビックリするやん、もー、」
ポンタが言う、
「それにアタックちゃうで、シュートやで、」
「ハハハハハッ、、、!」
ポンタのツッコミに五年生達が笑った、
「ごめーん、ついつい熱くなっちゃった、スポーツ見てるといつも熱くなっちゃうのよ、ハハハ、」
房子先生が初めて見せた意外な一面に野木先生は苦笑いしていた。
つづく
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