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お袋の味、スコッチエッグと吉高さん

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

ぼくにとって実家で食べるご馳走といえば、母親が休みの日に作ってくれる洋食だった。いま思い出しても母親は料理上手だったと思う。
看護師で夜勤の多い仕事だったためたまの休みに料理を作るときには、ぼくら子供の喜ぶ洋食が定番だった。
ハンバーグ、エビフライ、オムライス、シチュー・・・そして、スコッチエッグ。

おばあちゃんとは逆で、どれも美味しかった記憶しかない。
そのせいか、ぼくは大人になってからも「好きな料理は?」と訊ねられると恥ずかしげもなく「ハンバーグ、エビフライ、オムライス・・・スコッチエッグ」と答えた。その中でもぼくにとって、スコッチエッグは特別なものだった。
断面を見ながら「これ、どうやって作ったんやろ・・・おかん、すごいな」って。
田舎者なのに「あなたにとって、お袋の味は?」と訊かれれば、「スコッチエッグ」なのだから自分でも可笑しくなる。

うちの店では以前から賄い料理を作る習慣があり、ぼくはこれまで何度かスコッチエッグも作ってきた。
「これ、うちのお袋の味なの」と話すぼくに、スタッフは決まって「ハイカラですねー」と言ってくれる。

「そうじゃなくて。母親は仕事が忙しい人だったから、うちのおばあちゃんが料理をしてくれてたけどめっちゃ下手な人で。母親は母親で普段子供に料理をしてやれることが少ないから、たまに作ってくれるときには子供の好きなものを作ってくれるし力も入る。だからぼくらのお袋の味は、スコッチエッグなの(笑)」

2年ほど前、吉高由里子さんが連載されているページの取材依頼がマガジンハウスさんからあった。
毎回いろんなお店に吉高さんの思いつかれたお題を出され、そのテーマに沿った料理を作ってお出しするという企画。

ぼくに出されたお題は、「ご褒美」

一瞬頭の中を高級食材がいくつも駆け巡ったけれど、編集部の方に「敢えて普通のものを作ってもいいですか?」と訊ねると快く承諾していただき、ぼくはやはりスコッチエッグにした。ぼくにとって特別なもの、ご褒美だから。

吉高さん用とスタッフさん用にと2皿ご用意したけれど、このときのスタッフさんの人数がかなり多かった。
撮影で一皿を完食された吉高さんは「美味しいよ~、みんな食べなよ~」とスタッフさん全員に声をかけ、みなさんがお皿を囲むように味見される際には、またご自身も一緒に輪に入り召し上がってられた。
喜んでいただけたのも嬉しかったけれど、吉高さんの驚くほどの気さくさ、ぼくや取材スタッフさん全員に対する分け隔てない気配りに観ていて本当に感心と感激するばかりの取材だった。

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