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バゲット 弐号機

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 16.

こうして完成した長時間発酵のバゲットだったけれど、しばらくするともう少し試してみたいと思うことが出てきた。

最初にぼくのやっていた長時間発酵の工程をざっくりと書けば、次のようになる。

生地を仕込む→少し発酵を取った後、冷蔵の温度帯で生地を保管する。
これを翌日、少し生地の温度を戻し→分割→ベンチ(生地を休ませる)→成形→最終発酵→焼成

そこで今度は、次のように試してみた。

生地を仕込む→少し発酵を取った後、冷蔵の温度帯で生地を保管する。
これを翌日、少し生地の温度を戻し→分割→また冷蔵の温度帯へ戻し保管する。
これを翌日、少し生地の温度を戻し→成形→最終発酵→焼成

仮に最初にやった長時間発酵を ”初号機” とし、次に試したものを ”弐号機” とする。するとそれ以前までやっていたディレクト法(ストレート法)は ”零号機” ということになるな。

初号機は約1日の長時間発酵で、弐号機は約2日間の長時間発酵になる(零号機は基本通り3時間発酵)。
零号機と比べると初号機の味はかなり美味しくなったと思うし、当日の焼成までの工程が少なくなる分、店頭にパンを出せる時間も早くなった。

それでもぼくが弐号機をリフトオフ(発進)しようと思ったのは、弐号機は当日の仕事が成形から始まるため初号機以上にパンを店頭に出せる時間が早くなる。
またそれは、出勤時間を遅くすることも可能だと考えたからだった。
もちろん味が落ちると判断したら弐号機はやらないので、実際に試して食べ比べてみることに。

美味しい美味しくないはどこまでも主観でしかないけれど、明らかに弐号機の方が香りも味も強く美味しいと感じた。
ちなみに興味から3号機(約3日間の長時間発酵)も試してみたけれど、使徒に乗っ取られたせいか弐号機ほど美味しいとは思えず、やっていることに意味を感じないことは取り入れる必要もないので最終的に弐号機に落ち着いた。
そして以前よりも出勤時間を1時間遅くすることも可能になった。

こうして行き着いたのが現在のル・プチメックのバゲットになる(いまの作り方が変わっていなければ、だけれど)。

料理業界から来たぼくは、パンには発酵があるから難儀だなと幾度となく感じた瞬間もあったけれど考え方、捉え方次第では味と効率という二律背反に思えるものを両立させることさえできるのがパンであり、それを可能にするのも発酵なんだと思うようになった。

つづく

※ 本文とリンクする画像が手元になかったので、本文の方を画像に寄せてみました。


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