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イズムは、ムズイ

ドラマの監修をした際、小道具であるパンの製作を手伝ってもらったお礼に、つい先日プチメックの京都スタッフ二名と会食をした。
1人は現在京都スタッフとして活躍しているけれど新宿時代からの古参と呼べるスタッフで、彼はぼくの作りそうなモノ、考えそうなこと、やりそうなことを解ってくれている人の1人。
もう1人は、比較的まだ最近入った元パティシエの青年で、ぼくのブログ(現在は、このnote)を読んだことがきっかけでプチメックへの入社を決めたとのことだった(この拙文が双方に少しでも役立ったなら幸いです)。 

そんな彼らとの会話の中で古参のスタッフ・・・仮に田中圭くんとする。
その田中圭くん(仮名)がこんなことを言った。

「渡辺さん(仮名)とも話すことがあるんですが・・・」

渡辺さんとは、新宿店オープン前からの最古参の女性スタッフで、これまで厨房責任者として新宿、日比谷を守ってきてくれた最大の功労者であり、田中くんをはじめ多くの若い職人さんを育ててくれた人でもある。

「ぼくらは、西山さんと近いので考えることとかよくわかるんですが、ぼくらから下の代になると教えても ”それ” が上手く伝わらないんですよね、何というか、イズム・・・西山イズムというか」

あぁ、これのことだったんだ・・・

田中くんの話は、著名なフランス料理のシェフのインタビューを昔読んだときのことを想起させた。

そのシェフは腕の良い料理人さんを育てられ一番弟子、二番弟子・・・とそれぞれにお店を持たせ、グループを形成しようとされていたころだった。
シェフの立場となったお弟子さんたちは日々壁に突き当たっては悩み、グループのトップであるシェフに相談をされていたらしい。

「(技術的なこと以外も)自分が教えてもらったときと同じように、スタッフにも教えているつもりなのに伝わらない」

トップのシェフは、そのことを活字でも伝わってくるほど嬉しそうにインタビューで語られていた。

2人にこの話をして、ぼくはこう言った。

「でも、そんなん無理やし、必要もないで」

つづく

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