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で、ご用件は何でしょうか? 1.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

これはパン屋さんに限らないと思うけれど、とにかく営業電話が多い。
パン屋さんの場合、機器のほとんどが電気を使用するものなので恐らく他の食べもの屋さんと比べても驚くほど電気代が高くなる。
そういったことを知っているからだと思うけれど、一時は関西電力のグループ会社であるかのように名乗ったり、保安協会かのように名乗る人たちが「電気代が安くなりますよ」を謳い文句に頻繁に電話をかけてこられた。
これは、電力自由化になる以前の話。

言葉は悪いけれどそのほとんどは胡散臭いといった印象を与えるもので、ぼくは基本的には聞く耳を持たないし、うっかり聞いてしまったときには必ずというほど関西電力へ確認の電話を入れた。

「〇〇って会社の人が関西電力さんからの仕事であるかのように話されていますが、これは間違いありませんか?」

すると、

「関西電力がそういった営業をすることはありません」

「保安協会を名乗ってそういった営業をすることはまずありません」

返答は決まってこんな感じだった。

パン屋さんの電気代削減については、いまではそれを専門とされる会社グローアップさんが真面目に、無論合法に努力をされたおかげで多くのパン屋さんがグローアップさんへ依頼されるようになった。

以前、グローアップ社長の男前な古田さんと話をした際、そういった怪しい会社が話を持ちかけることが多かったため、同様に見られ苦労されたといったお話も伺った。こうしたグローアップさんの努力の甲斐あってか、最近ではこういった怪しく煩わしい話も随分と減った気がする。
だけど、忙しい時間帯であろうが相手の事情など顧みず不躾な営業電話をかけてくる人は、電気料金下げます系に限ったものでもない。
こういった一方的で不躾な営業電話は他にもまだまだある。

これも最近ではすっかりなくなったけれど、昔は銀行などの金融機関でないところから「お金貸しますよ」といった営業電話もよくあった。

うっかり耳を貸すと「日歩○銭でですね」といった聞き慣れない日本語を言われるので、「ヒブ・・・ひぶ?って何ですか?それではわかんないですね。ぼくにもわかるようにいま風に言ってもらえます?」と話を広げ、決まって最後にはこう言って電話を切った。

「つまり、この金利でお金を貸しますよ、ってお話ですね。あいにくうちはお金に全然困っていないので結構です。すみません」

ちなみにこれは、うちがとてもお金に困っていたころの話。

かかってくる営業電話の種類も時代によって偏る印象を受けるけれど、最近だと圧倒的に多いのが wifi環境を見直しませんか 系の類。
大抵の場合、第一声が「いま、少しだけお時間よろしいでしょうか」と節度あるものだけれど、つい先日かかってきたものは久しぶりに不躾なものだった。

言葉遣いこそ丁寧なものの、いきなり一方的におのれの話を早口ではじめ、wifi環境がどうのこうの「最近、お客様からwifiが途切れるといったご連絡を多数いただきまして・・・」などと言っている。
つまり彼の言いたいことは、wifiが不安定だという声が多いので、この機会に安定したものに換えませんか?」ということなんだろう。
ところどころで「余計な費用は発生いたしませんから」といったことを挟んでくるけれど、話の後半にはいくらかはかかりそうな話にも聞こえてくる。
ところがうちのwifiは途切れることなく、まったく支障がない。つい2ヶ月前に設置したばかりだから当然と言えば当然。

この営業電話は何とも説明下手で要領を得ないと思ったけれど、よくよく聞いてみると別人ではあるけれど、この2日前にかかってきた内容とほぼ同じだった。
丁寧な言葉遣いとはいえ他人の手を止めているという自覚も恐らくない。
一方的に話し続けていたので話し終えるのを待ち、ぼくはこれ以上付き合うのも不毛と思いこう言った。

「で、ご用件は何でしょうか?」

「えっ・・・」

「いや、いまの説明では何が仰りたいのか、よくわからないんですよ」

「どこがわかりませんでしたか?」

口調が強くて逆ギレかと思えてくる。

「さっぱりわからないですよ。それに実はいま、ぼくは忙しいんです。すみません」

と電話を切った。

ぼくらの仕事はお客様がお越しになるのを待つといった種類なので、自ら営業に出向いたり電話をかけまくるといったことがまずない。
だから営業職の方の大変さも想像でしかわからないし、それを否定するものでもないけれど、営業電話をかけてこられる際にはせめて最初に「いま、お時間はよろしいでしょうか」のひと言くらいは欲しい。

そうすれば「いまは手が離せませんからすみません」と、5秒足らずで済む。

つづく


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