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独立した元スタッフへの言葉と、経営のこと 1.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

独立した元スタッフが、昨年暮れに電話をくれたときのこと。

「実は来年、また店を出そうと思っているんです」

そう話す彼にぼくが脊髄反射で訊いたのは「人(スタッフ)は大丈夫なの?」だった。
彼は見事にお店を大繁盛させているけれど、このご時世にお店を増やすとなると何よりも一番の懸念がスタッフの確保というのは、どのお店も同じだと思う。

ところが彼のお店は、募集をすると思いのほか優秀な人材が集まるらしい。
「それならできるね!この大変な時代に景気の良い話で羨ましいし、嬉しいよ」と言うと、「いや、そうじゃないんです。西山さん、最近の子って独立したがらない子が多くないですか?」ということらしい。

彼の話では、スタッフの募集をすると応募がそれなりにある。それも年齢が30~30代半ばでキャリアもあり、職人としても優秀な子たちが応募をしてくる。
彼からすると年齢のことやそれほど仕事ができるのならそろそろ独立を、とは思わないの?ということだけれど、ところが応募してくる即戦力の彼らはまったくというほど独立をする気がないらしい。

「そうだよ、だからぼくは前から言ってたやん。ぼくらの時代みたいに “この道を選んだ以上、独立を前提に” って子は、いまはかなり少ないと思うよ。
独立心が稀薄っていうか、ある意味それだけ妙に賢い子たちが多くなったってことなんじゃないの」

そこで彼はこう考えたらしい。

ずっといてくれるとなると彼らの年齢を考え、いつまでも修業と言っているわけにもいかない。店としてもスタッフが結婚をし家庭を持ったとしてもやっていけるだけのお給料をあげれるようにならなければ。
そのためにもいまの店1軒だけでは、どれだけ繁盛してもすぐに売上の限界が来るから無理だ。キャリアや年齢に見合うポジションと、それだけの人件費をつくり出すためにも店を増やさないと

「そうだよ、だからそれもぼくは昔からずっと言ってたやん」

「本当にその通りですね」

「でしょう」

つづく



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