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なぜ、彼らはカフェをするのか。

ぼくの友人や知人のデザイナーさんたちは、みんなリアルな飲食店をされている。

逆に飲食店をされていないデザイナーさんを思い浮かべようとしたけれど、ぼくの狭い世界では1人もおられなかった。
現在は辞めてしまった人もいるけれど、一度はされた経験のある人たちばかりだ。中には質の高い和食店などをされている人もおられるけれど、そのほとんどがカフェ業態である。そして、他の人たちはどうか知らないけれど、彼らは「カフェなら気軽そうだから」「簡単そうだから」といった飲食業を舐めた志の人は1人もおられない。
だから人手が足りないときなどに現場を手伝うことはあっても決してプレイヤーにならず、あくまでもオーナー、副業として営まれている。

しかし、ここで飲食業界一筋だったぼくには一つの疑問が生じる。

その業界の大変さを身をもって知るぼくからすれば、なぜ、わざわざ飲食店をやろうと思われたのか。
彼らはみんな年下だけれど賢い人たちばかり。18歳だったとはいえ、ぼくのように「フランス料理を目指せばフランスで暮らせ、いつか自分の店もできるから一石二鳥だ」なんておバカな動機の人は、訊くまでもなくおられない。

またデザイナーさんは人脈も広いだろうし、店舗デザインを手掛けてきた人も多い。当然その間にも華やかに映る飲食業界は「労多くして益少なし」という現実も聞かされているに違いない。
くり返しになるけれど、彼らはとても賢い人たちである。少なくともぼくよりはそうだ。そう思うと、この一連の話で書いた「手段と目的の倒錯」を彼らがやらかしているとも思えない。 
これについては、ぼくにとってのイベントやウェブサイトと同じで「そこ(飲食店)でガッツリ儲けてやるぜ」といった意識など皆無なのだと思う。

これは、ぼく自身の抜け切らない田舎もの体質がそう思わせるのだけれど、デザイナーという仕事は理屈抜きにかっこいいい。
職業を訊ねられた際に「デザイナーをやっています」と、ぼくも一度くらい言ってみたかった。そこで「何のデザインを?」とお約束の質問をされたときには、待っていました!という心の声を悟られぬよう「あー、そうですね。〇〇とか、〇〇とかですね」なんて言える実績があれば申し分ない。
そんな憧れ羨むようなかっこいい仕事をされている彼らが、「糊口をしのぐためにカフェをやってますねん」というのも考えにくい。仮にそういった人がおられたとしても少数派な気もする。

いろいろと考えを巡らせた結果、これであろうという答えが思い浮かんだ。

つづく


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