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『小さくて強い店』について考えてみた 4.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

もしぼくがいまと違う仕事を選んでいたとして、例えばそれがデスクワーク中心の事業であればきっと先述したことと正反対の考え方を書いている。
「どんどん人を雇用するのとしないのとでは、どちらがいいと思う?」と、もし訊かれたら迷わず「いまのご時世、雇用しなくて済むなら極力雇用しない方がいいに決まってる」と答えるに違いない。

1人、2人ではじめられたお店が雇用しないという考えで運営されること自体は、きっと時代の潮流に合っているとも思う。
ところが雇用をすることに多くのリスクやデメリットがあるとわかっていながら、それでも1人や2人でされている小さなお店はもっと脆弱だと考えるのにはもちろん理由がある。
それはぼくらの選択した事業がパン屋さんだから。
つまり労働集約型の仕事だからということに尽きる。

これも一概には言えないけれど、いわゆる飲食業界のいろんな業態がある中で相対的にパン屋さんが一番キツイとぼくは思っている。
それは体力的なこと、稼働している時間帯や商品になるまでの手間や時間コスト、設備投資の大きさ、単価の低さ・・・いろんな面を考えてもそう思えてくる。
飲食業はどんな業態であっても基本的には労働集約型で人海戦術によるものだけれど、特にパン屋さんはその典型だと思う。
また単価が低い分、店を維持継続させるために必要製造量も当然多くなるし、規模や特殊な設備を持ちでもしない限り必然的にそれだけ多くの手が必要にもなる。

パン屋さんは適正な人数のスタッフがいて機能し、初めて生業として成立するだけの生産数になると考えるので、1人、2人でやるパン屋さんが小さくて強い店になるとはやはり考えにくい。
こう書くと「1人、2人でもやってやれないことはない」といった声も聞こえてきそうだけれど、この「やれる」も恐らく職人視点での作ることを指しているだけで、作れるというだけなら経験を積んだ職人さんなら誰でもできる。
自分でお店をやって事業主になるというのは、お店を維持継続させることが最優先課題になるわけで、いまの厳しい時代に感情論でお店や事業が維持継続できるのならどこの経営者も悩んだり苦労なんてしない。

つづく


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