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経営本のスゝメ 6.

こうしてぼくが経営の勉強をしていたとき、ずっと不思議でならないことがあった。

なぜ、正垣さんの著書がないんだ?

この時点で既にいろんなフードビジネス誌上で、正垣さんのインタビューはかなりの数を拝読していた。どれも含蓄のある話ばかりで、ただただ勉強になり感銘を受けるものばかりだった。

それなのに・・・

なぜ、書籍化しない?

出版社や編集部の目は節穴か?とさえ、正直思った。

そんな待ちに待った正垣さんの著書が2011年、刊行される。

「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ 」

もちろん発売日にはスキップをしながら本屋さんに行くわけだけれど、遂にそれを手にしたぼくは胸中で毒づかずにはいられなかった。

おせーよ

それにしてもこのタイトルは「強いから勝つのではない、勝ったものが強いのだ」という言葉を連想させ、勝てば官軍 負ければ賊軍にも通ずるとても刺激的なものだった。
これにはきっと気色ばむ人もいそうだなぁと思ったけれど、キレイごとを抜きにした、資本主義の中で経営をする真理を端的に表したそのタイトルに、正垣さんらしいなぁ、と好感を抱いた。
その内容は、上がり過ぎた期待のハードルさえも易々と凌駕するおもしろさで、何度も再読した。このおもしろさとは書くまでもなく、勉強になったという意味である。

今でこそ分子ガストロノミーという概念の登場以降、最先端な料理をされている高級店などでは、美味しさを科学するといった志向になった。
他方、チェーン店で、それも安価な商品でありながらこの「美味しさを科学する」という考え方を昔から導入されていたのがサイゼリヤさんだ。

その根底には、正垣さんご自身が大学で物理学を勉強され理系的な思考をされることがある。また、サイゼリヤさんの凄さは科学や物理を美味しさだけでなく経営にも導入されたことにある。
料理であれ経営であれ昔ながらの抽象的な勘に頼ったものと違い、数値や科学的な根拠によるものは、誰に対しても説得力が圧倒的に違う。
そして何よりも、科学的であるということは再現性があるということでもある。
そう考えるとチェーン店で安価な商品だからこそ、そこが重要だったのだろうと思えてくる。

とにかく規模を問わず食べもの屋さんの経営者は必読だと思うし、異業種の人であっても経営に携わる人であれば、きっと多くの知見を得られる名著だと思う。

この正垣さんの著書が出てほどなく、「サイゼリヤ革命 世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話」という書籍も刊行されている。
こちらは、長年サイゼリヤさんを取材してこられた元柴田書店の山口芳生さんという外食記者さんによる著書だけれど、これもとてもおもしろく超お薦めである。


そしてここからは、どうでもいいような余談を。

昔、フードビジネス(という雑誌)だったと記憶しているけれど、正垣さんと先述の安部修仁さん(当時吉野家社長)が同誌上で対談されたことがある。
いわば、ぼくにとっては外食産業界のアイドルお二人による対談なので夢中で拝読したのだけれど、あのときのただならぬぼくの高揚感をどう綴れば伝わるだろうと考えていて、それに近いと思い当たるものが二つあった。

一つは昔、Invitationという雑誌で浦沢直樹さんと宇多田ヒカルさんの対談を見つけ即、表紙買いをして読んだとき。
もう一つは、まだボクシングに転向する前の那須川天心選手のインスタに挙げられた焼肉店での井上尚弥選手とのツーショットを目にしたとき。

伝わらないかなぁ、伝わらないだろうなぁ・・・

まぁ、余談だからいいんだけど。

あ、今夜は井上尚弥選手がルイス・ネリとの世界戦だ。
みなさん、応援しましょう。

つづく


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