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やってみなはれ、やらなわからしまへんで 2.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

 川本さんの奥様にお話したことは、ぼくが同じ男だから旦那さんのフォローをしたというわけでもなく、単にぼくの経験則でしかない。
ぼくはこれまで少しだけ背伸びして身の丈に合わないようなことを繰り返してきたし、それがあるからこそいまがあると思っている。

8年前、新宿での出店のお話をいただいたときは、京都で店を2軒しかやっていなかった上に、2軒目を始めてまだ2年目のことだった。
だから当然のように周囲の方々からは多くのご心配と反対の声をいただいたけれど、ぼくはといえばまったくというほど迷わずに出店を決めている。
その後いろんな方から一番よく訊かれたのは「不安はなかったですか?」という質問だけれど、「不安・・・あっ、忘れてた」というのが偽ざる気持ちで、好奇心の方が強すぎたのだと思うけれど、不安だった気持ちがまったくというほど思い出せないので、きっとなかったのだと思う。
無論ぼくの人生を大きく変える大イベントであったことに違いないし、後で振り返ったときにこれはちょっと身の丈に合わないどころか、5段跳びくらいのことをやったんだ・・・とは思った。

それでもレベルの高いお店も多く土地勘も皆無な東京で、それも新宿三丁目という超一等地であれだけの規模の店をはじめたときよりも京都で最初の小さな店をはじめたときの方が何倍も緊張したのを憶えている。
だから人は一歩踏み出しさえすれば何とかするものだし、何とかなるものなんだとまるで他人事のように思うようになった。

5段跳びもの大イベントというのはそれほど頻繁に訪れるものでもなく、自分の人生においてここはというときにご縁と運が良ければ巡り会うものだと思うけれど、1段ずつであれ、少し身の丈に合わないことを繰り返すことで、5年前、10年前には無理だと思っていたことがいつの間にか日常になっている気がする。

きっと大人たちがよく言われる経験や成長とは、こういったことなのだと思う。

つづく


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