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為替介入の話

今のように外国為替相場の急激な変動が起こり円安が進行すると、それを抑えるために行われる為替介入が注目される。
この為替介入が、最近だと4月29日と5月2日に実施された(多分)。

29日は1ドル160円を超えた直後だったので、これは「160円以上は容認ならねぇー」という政府の強い意思を多くの人が感じただろうし、こういった場合、大抵は事前に財務官からそれを示唆するコメントがあるので、想定通りだった人もおられたと思う。

ところが2日に実施されたものは早朝5時過ぎという薄商いだったため、たった40分ほどで一気に4円以上も円高に振れた。それも米国でFOMC(米国の金融政策会合)が終了し、その後のFRB(米国中央銀行)パウエル議長の会見が終わった直後というまさかのタイミングだったため、青天の霹靂とも言うべき奇襲に誰もが意表を突かれ、界隈の人たちのSNSやネットは阿鼻叫喚の騒ぎとなった。

この為替介入があったとされる4月29日と5月2日の米ドル・日本円の推移が以下の画像。

時間軸は、1時間足(ローソク足1本が1時間)
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一時的であれ、著しい円安の進行が止まったことがわかると思う。
このトリッキーというか、最大効果を狙ったタイミングで、ある意味あっぱれな為替介入を指揮したのが、今回の件ですっかり有名人となった神田財務官。
さすがスーパー賢い財務官僚だと感服するばかりだけれど、そんな神田財務官は今月末で退任される。そう思うと、彼にとって最後の大仕事だったのかもしれないなぁ。

外国為替取引などをされていない人は、「4円以上も円高に振れた」と聞いてもピンと来ないかもしれないけれど、個人トレーダーの中には、この「たった40分」で大損をした人、資産を失い相場から退場した人も大勢おられたと想像する。
まぁ投資は自己責任なので、これは仕方がない。


どの国の政府や中央銀行も外貨建て資産を持っている。その残高は「外貨準備高」呼ばれ、日本は中国に次いで二番目に多い。つまり、世界で二番目に世界の基軸通貨であるドルの保有が多い国ということになる。ちなみにこの外貨準備は、預金だけでなく証券なども含まれる。

こういった外貨建て資産を持つ理由は、万が一にでも自国の通貨危機が起きた際、海外への債務(支払い義務)返済が困難になったり、今回のような為替介入が必要になった場合に使うため。だから今回の為替介入でもそれが使われた。
日本が保有するドルを売っているので(=円買い)、人為的に円安を止める(円高になる)効果がある。

上記のチャートを見ての通り、実際に効果はあった。

神田財務官、お見事。

しかし、4月26日から5月29日までに為替介入に使った外貨準備額は、約9.8兆円という過去最大額だったことを財務省が明らかにしている。
ここで、もう一つ米ドル・日本円の推移の画像を。

時間軸は、日足(ローソク足1本が1日)

2枚目の画像は、1枚目を俯瞰したものだと思ってほしい。1枚目が東京都の地図だとしたら2枚目は日本地図という感じ。
それにしても2004年以降だけを見ても円安の進行が酷い。ついでだからこの記事の最後に、現在の円安が始まる起点となった2021年1月から直近までのチャートも載せておきます。

二度の為替介入によって、5月3日には1ドル151.8円まで円高に振れているけれど、それを底にまた円安は進行し7月3日には1ドル161.9円をつけている(直近は、1ドル160.74円)。
1回目の介入があった4月29日のレートを6月26日には超えているので、約9.8兆円という巨額な外貨準備を使い円安を抑え込むことができたのは、わずか2ヶ月間ほどだったことになる。だからといって、神田財務官が責められるものでは無論ないと思うし、あの時に介入をしていなければ、さらにそのまま円安が進行していた可能性も高い。

とはいえ、結果的には「円安進行の時間稼ぎ」にしかならなかった。
つまるところ、経済や市場は他国との需給といった相対的なものなので、自国の都合による為替介入や金融政策で人為的にコントロールしようとしても限界、無理があるのだろう、と素人ながら思う。

つづく

おまけ
2021年1月から直近までの米ドル・日本円の推移。
そりゃ、物価が高騰するわ。

時間軸は、週足

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