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ライターを失くした。

禁煙をすればベンツが買えるなんてことをどこかの誰かが言うが、
僕はライターだけでその辺の中古車が買えてしまうだろう。

帰り道に何時ものコンビニ寄る。
「えっと、49番下さい。」
店員が、
「いつもライター買われますね。」
と、僕に話しかけてきた。
「いつも無くしちゃうんですよ。アホなんでしょうね。」
滑稽な人間を演じてみることにしたのは、店員が素敵な女性だからではなく、次ライターを買う時も恥ずかしくないようにする為だ。
店員は軽く笑ったあと、
ありがとうございました。と、マニュアル通りの対応に戻った。

僕は恐ろしく感じた。
コンビニの店員としてではなく、人間として、マニュアルを逸脱して僕に話しかけてくる事が生活のリズムを崩した気がしたからだ。
パーカーのジップを上まで閉めたあと、小走りでその場を後にした。
家の鍵がチャラチャラなる音が、気にならなくなったのはいつからだろうか。
そんなことを考えながら何時ものジッポでタバコに火をつける。

明日にはあのコンビニは無くなっている事を思うとあの演技は必要なかったのかも知れない。
そんなことを思いながら、ライターを爆弾に変えた。



ショートショートってこう言うこと?


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