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幸せになりたいエルフの冒険 第十一話 エルフと願いを叶える実 パート10

エルフの女の子デフィーは、
ダークエルフの女の子フィリア、
人間の女性で作家のシャイルと一緒に
幸せを探す旅をしています。

夕暮れ時に宿を取る為、
ある町に立ち寄ったデフィー達。
その町には濃い霧が発生しており、
デフィーはフィリアとシャイルと
はぐれて一人になってしまいます。

その際デフィーは霧の中で、
占い師を名乗る若い女性の
ルフトシュに出会います。

ルフトシュはデフィーに、
食べれば願い事が叶うと言う
『アギベデの実』を渡して
去ってしまいます。

その後無事にフィリア達と
合流することが出来たデフィーは、
宿の食堂でフィリア達に
ルフトシュやアギベデの実の話をします。

すると食堂内に居た
中年の男性客のオルアディが、
自分に愛想を尽かして出て行った
妻と娘に戻って来てもらう為に、
アギベデの実を譲ってくれないかと
デフィー達に頼みます。

デフィーにアギベデの実を
譲ってもらったオルアディは、
実を食べてみますが、
オルアディの身に
変化は何も起こりませんでした。

オルアディの願いが叶わなかったことに、
デフィーは責任を感じて謝罪します。

オルアディはデフィーに
気にしなくていいと言い、
そして
アギベデ実を譲ってもらったことへの
お返しの約束をデフィーにすると、
自分の部屋へと戻って行きました。

部屋に戻ったオルアディは
テーブルの上に荷物を置き、
ベッドに横になります。

オルアディ「はぁ~・・・
      完全に信じてた訳じゃ
      なかったけど、
      残念だったなぁ・・」

ぼんやりと天井を見つめながら
呟くオルアディ。

オルアディ「まぁ、そうだよな。
      普通に考えて、
      木の実を食べただけで
      願い事が叶う訳が無いよな・・
      それを信じてしまったんだから、
      今の俺は
      相当参ってるんだなぁ・・」


     (でも今回のことで、
      改めて分かったことも有った。
      やはり本当に叶えたい
      願い事は、
      自力で何とかするしか
      ないってことがな。

      ・・その為にはどうするか?
      妻と娘に戻って来て
      もらう為には、
      会いに行って
      また一緒に暮らして
      くれるよう頼むのが、
      一番手っ取り早いよな・・

      でも原因だった俺の金銭事情が
      変わっていないからなぁ・・
      頼みに行った所で
      妻達も戻って来ては
      くれないよなぁ・・

      もし万が一
      戻って来てくれたとしても、
      稼ぎが無くて金の無い状態では
      すぐに同じことの繰り返しに
      なってしまうだろうからなぁ・・

      やはり妻達に頼みに行く前に、
      ちゃんとした仕事を見つけて
      安定した収入を
      得た状態にならないと
      駄目だよなぁ・・・

      とにかく金が無いことには
      話にならん・・)

オルアディは大きなため息をつきます。

オルアディ(でもその為に
      こうして各地を回りながら
      働き先を探しているのに、
      今日もまだ
      見つけることが
      出来ないんだもんなぁ・・
      正直、明日だって
      見つかるかどうか分からない・・。

      いや、
      駄目だ駄目だ、
      弱気になっては。
      何としてでも働き先を
      見つけて稼ぎを
      得ないことには、
      いつまで経っても
      妻と娘に戻って来て
      もらうことは出来ないぞ。

      頑張れ!頑張るんだ!俺。
      頑張っていれば、
      いつかは道が開けるはずだ・・
      いつかは必ず・・)

オルアディはゆっくりと目を閉じます。

オルアディ(・・そう考えると、
      今の俺に必要なのは
      金なんだなぁ・・

      金ってヤツは、
      働く以外には
      手に入らないのか?
      何か他に金を
      手に入れる方法はないのか?

      ・・改めて思うと、
      今までそんなことを
      考えたことが、
      いや、
      考えようとしたことも
      無かったなぁ・・
      金は働いて得るものだと
      思っていたからなぁ・・

      金ってどうすれば
      手に入るんだ?・・

      う~ん・・)

黙考するオルアディ。

オルアディ(とは言っても、
      やはり一番確実なのは、
      働いて手に入れることか・・
      今までがそうやって
      手に入れて来た訳だからな。

      そもそも働くと
      何故金を貰えるんだ?

      俺が働く、
      つまり仕事をすると
      金が貰える、
      何故だ?
      俺に金を払う
      雇い主が居るからだ。

      雇い主は何故金を払うんだ?
      人を雇わなければ、
      つまり、
      その仕事を自分ですれば
      金を払わずに済む。
      それなのに
      何故そうしないんだ?

      何かしらの
      出来ない理由が有るのか?
      理由が有るから
      人に仕事を任せる、
      そして任せた相手にも
      ただ働きと言う訳には
      いかないから
      その代価を払う。

      見方を変えれば、
      雇い主には金を払ってでも
      やってもらいたい、
      或いはやりたくない仕事が
      有ると言うことか・・

      それに、
      すべてのことを
      一人の人間が出来る訳では
      ないからな。
      どうやったって限界が有る。
      だからどこかしらで
      人に任せる必要が有る訳か。

      そして雇い主は、
      仕事を任せる代わりに代価を払い、
      任された側は
      代価を受け取る代わりに
      仕事をするんだな。

      これが働くことで金を貰える
      大雑把な仕組みだな。

      う~ん・・
      だとすると、
      働く方法は
      働き先が有って、
      そこでの仕事に
      金を払ってくれる雇い主が
      居ないことには、
      金は手に入らんのだな・・

      今の俺には
      その働き先が無い訳だ・・

      そこでだ、
      働く方法以外に
      金を手に入れる方法は
      無いものかなぁ・・)

オルアディはしばらくの間思案します。

オルアディ(・・給料を貰う、
      そうだ!
      貰う、が有ったか。
      給料の他にも、
      小さい頃はお小遣いとして
      金を貰っていたっけなぁ。
      考えてみれば、
      貰うことも金を手に入れる
      手段の一つだよな。

      でもいつからか
      働いて給料を貰う以外に、
      金を貰うことなんて
      一切無くなってしまったなぁ・・
      何故だろう?・・

      って、
      そりゃあそうだよな。
      貰うの反対はあげるだ、
      誰かが金を貰う為には、
      そいつに金をあげる奴が
      居ないとならない。
      そう考えると、
      貴重な金を理由無く
      他人にあげる奴なんて
      居ないよなぁ・・

      そもそも、
      金を他人にあげる奴って
      どんな奴だ?
      俺の場合は・・
      親だったか。
      親は何で俺に金をくれたんだ?・・
      ってまぁ、
      俺も今では親だし、
      両親の気持ちは分かるか。
      自分の可愛い子供になら、
      小遣いと言う形で金を
      あげたくなるもんな。

      ・・とは言え俺の場合は、
      稼ぎが少なかったから
      娘に小遣いを
      あげれてなかったよなぁ・・

      無い物はあげられない、
      つまりは
      金が無いことには
      あげることが出来ない。

      だから他人に金を
      あげれる人間って奴は、
      金を持っている人間、
      もっと言えば
      他人に金をあげても
      平気な余裕の有る、
      経済的に恵まれた者だと
      考えられる訳だな。

      と言うことは、
      金を誰かから貰うとすれば、
      それは経済的に恵まれた
      人間から貰うことになる。
      そんな人間からどうすれば
      俺は金を貰えるのか?

      俺の近くには
      金に余裕の有るような
      人間は居ない・・
      そもそもの出会いが無い訳だ・・

      もし仮に居たとしても、
      その人間達は俺になんて
      金をくれんだろう。
      当たり前だ、
      渡す理由が無いのだからな。

      俺がそう言った人間達から
      金を貰うとなると、
      やはり働いて
      給料と言う形で貰うしか
      方法が無さそうだよなぁ・・)

オルアディは深いため息をつきます。

パート11につづきます。

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