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BARTHの事例から、製品が行動を変えてしまう仕掛けについて語ろう。

 BARTH、2年くらい前にすごくブームになってましたよね。

 私は食品を専門としているので入浴剤のことはわかりません。中性重炭酸と聞いても、「HCO3-で中性とはどういうこっちゃ」くらいだったんですが、評判はとても良かった。使用者曰く、
「すごく体が温まる」
「上がった後もずっとポカポカ」

 なるほど?

 肩こり腰痛持ちの私は早速買って試したのですが、試す前に気になったのが表示でした。

「37〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり15分以上の入浴をおすすめします」
「入浴中、数分間お湯の中で身体や頭皮を優しくもみほぐしてください」

 なるほど?

 ちょっと面白いなと思ったんですよね。「ちょっとぬるめ」だったり、「入浴中にもみほぐせ」という指示が書いてあったりするの。

 まるでそれが風呂のマナーかのように、普通のことのように書いていますが、少しだけそれまでの生活スタイルとずらしている。
 そして、そこら辺の入浴剤よりちょっと高めの入浴剤だから(1回330円)従ってみる気になる。

 これ、そりゃリピーター出るよねぇ。
 だって、これは結果を出すように行動の変化を促しているから。

 どういうことか。

 お風呂のスタイルは人によって違うと思いますが、お風呂にゆっくり15分も入らない人はそれなりにいるでしょうし、お風呂の中で毎回身体を揉んで血行を良くするのを心掛けている、という人は多分半分もいないのではないでしょうか。

 BARTHは優れたプロダクトだと思っています。
 しかしこれが仮にバブだったとしても、それまで5分くらいでお風呂に浸かって上がる人、ただ浸かっているだけの人は、ぬるめのお湯に15分浸かって、その間身体をマッサージしてたら、血流改善してポカポカになるのではないでしょうか。
 でも、普通はやらない。

 この製品のすごいところは、それを行動させるように仕向けたこと。

 私はこのプロダクトの肝はここだと思いました。効果があるだけでなく、効果が出るやり方をさせた。
パッケージから機能まで、この製品はストーリーが完璧だと思います。

 本当に良いプロダクトというのは、機能が優れているだけではなく、消費者の行動を変えてしまうものだと思います。

 ルンバが一番良い例でしょう。
 ロボット掃除機は床に大きな物があると掃除をしてくれません。なので、床に物を置かなくなっていく。
 結果、部屋が綺麗になっていく。

 良い商品は、機能そのものだけではなく、ちょっとした仕掛けが必要なのでしょう。
 BARTHの場合はそれが使い方だった。そして、そういう使い方をさせる価格、デザイン、ストーリーを組み上げていく。
 そして実際に効果を体感させて、リピーターにしていく。

 この場合の効果で望ましいのは、速やかに実感するものだと思います。
 例えば、仮に花粉症に効果のある機能性食品(注:機能性表示食品は絶対にこういう表示はしません。この文章中だけの便宜的な使い方です)があったとしましょう。しかし、効果が出るまでに8週間かかっていたらスギの季節は終わってしまいます。

 その点も、BARTHは完璧です。
 効果が出るのが即時だからです。 
 そして、効果を実感出来る可能性が極めて高い。

 余談ですが、ヨーグルトが普段の食事に多いのは、腸の変化を便通で感じやすいからというところもあるでしょう。
 これも効果の実感がしやすい。

 また、最近睡眠の質向上の製品が軒並みヒットを飛ばしていますが、これは悩みが大きいことに加え、寝るだけで効果の測定が出来るようになったことが理由だと思います。

 Apple Watchだったりポケモンスリープだったりで、睡眠の質を測ることが簡単に出来るようになりましたしね。

 数字で簡単に評価されるのが一番人を納得させやすい。ダイエット食品だって、体重計で体重が簡単に数字で測定できるから売れるのです。

 またメーカーの目線だと、こういう商品って10人中10人に効果がある必要はなくて(そんなの医薬品にもないけど)、10人に2人くらいめちゃくちゃ効いてリピーターになってくれれば大ヒットなので。

 メーカー、特に研究職でいると機能をとにかく強める方向に走ってしまいがちですが、その効果を最大に伝えるためのストーリー作り、行動の変化を起こさせるための仕掛けづくり、そしていかにその機能を速やかに体感させるか。

 そういったことを意識していく必要があるのだろうと思った事例でした。

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