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食品における消泡剤の必要性について語ろう

先日シリコーン樹脂が少し話題になっておりました。

シリコーン樹脂ですが、用途としては消泡剤として使われます。消泡剤とは文字通り、泡を消すために使う食品添加物です。

正直気持ちはわかる気もするのです。「シリコーン樹脂」、字面だけならシリコンのペコペコの容器とか想像しますよね。タイヤの原料の天然ゴムは炭化水素鎖で出来ているので、シリコンも関係ないんですけどね(嫌われる言い回し)。

シリコンとシリコーンの違いは信越シリコーンさんのページが分かりやすいので貼っておきます。ケイ素の重合体を総じてシリコーン樹脂といいますね。
こういうとまた「ガラスか!」とか言う人出てくるかもしれませんが。

さて、そもそもなぜ消泡剤なんてものを使わなければいけないのでしょうか。

「たかが泡を消すだけでしょ?」

そう思われる方もいるかもしれません。

しかし泡、なかなか侮れないのです。
これは工場や製造現場のスケールを考えないとなかなかイメージできないかもしれません。

では、具体例とともに示してみましょう。

例えば牛乳をコップに入れた時、カップのふちに小さな泡がついていることがあると思います。コップ1杯、だいたい200mLくらいですね。
あれが数トンのレベルになるとどうでしょうか。
しかも秒速数リットルみたいなすごい勢いで配管から投入され、中でもガンガンかき混ぜられているとしたらどうでしょうか。

当然ですが、バチクソ泡が立ちます。
牛乳でなくても、ものによっては何もしなければ数十センチ泡が立ちます。
タンパク質が入ってれば泡は立つ。

泡が立ったっていいじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、これはマジで大変な問題です。

まず、殺菌が難しくなります。
泡というのは空気を抱えていますが、空気は液体より熱が伝わりにくい性質があります。そのため、泡を噛んでいると当初予定していたはずの熱がかからず、殺菌不良を起こす可能性があります。

原料の混合にも問題が出ます。
ビールを注いだグラスを想像してください。泡の上に粉末を乗せたときにそれを均一に混ぜるの、超難しそうですよね。

また、商品の品質にも泡は影響します。
プリンを作る時、加温しながらゆっくりかき混ぜるのは、固めた時に内部に泡が入らないようにするためですよね。
あんな感じで、泡が入っていると不良品判定される食品もあります。茶碗蒸しとかね。

そして何より、充填の問題があります。
製品は当然決められたパッケージに決められた重量を注がなければいけません。しかし泡は当然ながら、軽くて体積が大きいです。
結果、泡が立っているとそのせいで規定の重量を注げず、でももうこれ以上入りません、みたいな事態が起こり得ます。これは表示違反になってしまうので、大変問題です。

その他、加工食品に加える以外では揚げ油に入れるケースがあります。
片栗粉をめちゃくちゃつけた揚げ物、スゲー泡立ちますよね。ああいうの、工場とかセントラルキッチンみたいなところで大規模に揚げ物をやると高温の泡がボコボコ出るので、リアルに火傷や火災とかのリスクがあります。そのために使われることもあります。

そんなわけで、シリコーン樹脂や乳化剤などの消泡剤を入れて界面張力を下げることで食品では泡を消しています。スケールがあまりにデカいので起こる問題に対する解決策と言えるでしょう。
界面科学の話は面白いけどマニアック過ぎるので割愛。

ちなみにシリコーン樹脂については、ゴムみたいなものではなくオイリーなものを想像してもらった方が良いのかなと思います(分散してるだけやろったらそうなのですが)。

信越シリコーンHP(https://www.silicone.jp/products/notice/138/index.shtml)より引用

かなり長いこと使われている食品添加物であり、安全性は指折りです。
というのは、基本物質として安定してるので、何かとくっついたり反応したりして体内に蓄積するということは考えにくく、基本は全量そのまま便中に排出されると考えられているからです。

バリウム経験者はあのバリウムとか想像して貰えば良いのかもですが、あの量の何万分の一しか摂取してないと思います。

あと、胃カメラ飲まれる方は、胃カメラの前に飲まされるあのヘンテコな味の液体がまさしく消泡剤、シリコーンですわね。
医薬品収載されてるレベルの安全性です。

何度も言っていますが、基本的にメーカーだって、食品添加物は入れないで済むなら入れたくないのです。高いし。

それでも入れるには相応の理由があって、安全性を担保した上で仕方なく入れているケースが多いです。

シリコーン樹脂という言葉から入ると「ウワァ…」となるのは仕方ないかもしれないですが、なんで入れてるの? となると、それなりに実は理由はあったりするというところを考えていただけると幸いです。

ちなみに、今回はシリコーン樹脂をメインに語りましたが、泡とはすなわち空気と液体の界面ですので、界面活性剤、いわゆる乳化剤が使用されるケースもあります。
乳化剤については過去に別記事を書きましたので、そちらをご参照ください。

そしてどうでもいいですが、僕はスプラトゥーンのオーバーフロッシャー相手にするのが死ぬほど苦手です。あれこそ消泡剤が必要だと強く思わんかね…!
求ム同志。



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