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しばらく食品のトレンドは「冷凍」だと思う4つの理由

 今後10年くらいの現実的な食品のトレンドはやっぱり「冷凍」なんじゃないかって話をしよう。
 とはいっても、未来を完全に予測できる人なんて誰もいないので、この話は完全に予想です。根拠のようなものは出すけど、正確なソースとかは期待しないでほしい。

 あ、トップ絵は『「冷凍食品の進化」をテーマにポップでキュートなイラストを描いて』という、クリエイターの人にぶっ飛ばされそうな依頼をAIに投げたら描いてくれたものです。かわいい。

 食品の未来には夢がある。
 特に昨今、フードテックと呼ばれるものの研究テーマにはゲノム編集や培養肉、フードプリンターや昆虫食まで色々ありますが、商品という軸で見ると実際にはどれもそれぞれに課題があり、あと10年以内での普及というのは正直難しいなと思っています。

 一部のゲノム編集食品と培養肉、昆虫食については今も少し商品が出ていますし、10年後ももう少し出ているかもしれません。
 しかしこうした食品群が通常のスーパーに売られるような形で広く一般化するには、20年はかかるんじゃないかなと思っています。

 フードテックについて商品以外のところに目を向ければ、無人配送などの物流DXや、調理ロボみたいなものの方が実現性が高いのではないでしょうか。

 食品業界の目下の課題は労働力不足です。新規技術の発展は面白いしワクワクするけど、今はどの会社も「このままいくとマジで今の体制維持できないんじゃね?」っていう危機感がある。

 具体的には、長距離ドライバーの時間外労働規制による2024年問題がもう直近の課題。博多⇔東京とかもうきっついよね、って話になってる。あとは、工場で働いてくれる人が減ってる+高齢化している問題。前に工場の自動化なんてそんな簡単なもんじゃないよ、って話はしたし、実際に完全自動化は無理だけど、やれるところはやっていって、省人化を進めていかないとマジで商品が作れなくなっちゃう。
 なので、そのあたりには大きな開発費用と投資をかけていくでしょう。

 一方で、最初に挙げたフードテックはまだ市場が出来てないからね。
 そもそも、いざ食べるものとなると基本的に普通の人間は保守的なものです。 日本で一番売れているインスタントラーメンは今でもサッポロ一番で、世界で一番売れている飲み物はコカコーラなのです。
 もちろんこれらの商品は磨かれ続けていますが、基本骨格は変わらないし、事故やよほどの事態がない限り売れ続けるでしょう。

 技術が金を産むのではなく、商品が金を生みます。
 ゲノム編集食品は既存の品種改良の延長という意味で価値の高いものを生む可能性はありますが、当初は遺伝子組み換えとほぼ同様の扱いを受ける可能性は高いと思っています。ここをどうクリアしていくか。
 どうでもいいけど、ゲノム編集ってネーミング本当に最低だったと思う。一般人から忌避される要素しかないじゃん。Genome Editingを直訳するなよ……。

 培養肉はちょっと可能性があると思っている。これは、単純にコスト的に安く上がってくる見込みがありそうだからです。
 一般的に考えて、ひき肉と同じ値段だと培養肉を買う人は少ないでしょうが、半額なら話は別です。 牛肉や豚肉が将来的に希少になっていく可能性は否定しませんが、これは10年のスパンではないと思います。
 どちらかというと、家畜の排出する二酸化炭素とかをコスト化するような動きが世界的に広がって、そこを考慮すると培養肉の方が安くね?みたいな話になるかもな、とか。

 長くなりましたが、なぜ現実的に冷凍が来ると僕は考えているのか。
 4つ理由があります。


1.凍結技術の進歩

 近年で一番進化したのが、急速凍結をはじめとする凍結技術の進歩です。
 冷凍食品のチャーハン、そこら辺の中華店よりウマいよね。
 最近は、凍結したひき肉や野菜も普通にスーパーに並んでいます。凍結させても、普通に料理に使えるようになっちゃったのが冷凍技術の進化。

 そして正直、同じく温める必要があるなら品位はチルドを超えているものがある。特に麺類。コンビニのチルドパスタと冷凍パスタ、冷凍パスタの方が美味しくなっちゃったよね。
 冷凍うどんの凍結技術とかはもう極まっていて、流水麺は即食べれるくらいしか優位性が無くなっちゃった(食感好きって人はいるかも、ごめん)。

2.添加物削減の流れ

 添加物削減はここ10年で急速に進んだ動きですが、この流れは止まらないでしょう。

 添加物を入れる理由はいくつかありますが、先日のマフィンの件でも明らかになったように、大きな理由の一つは微生物制御、要は腐らないようにするためです。

 常温やチルドで数日持たせようとした場合には、殺菌や添加物により増菌を防ぐ工程が必要です。 一方で、冷凍食品には保存のための添加物を使う必要がほとんどありません。アイスクリームに賞味期限がないように、凍結した状態では増菌リスクが低いからです。

 もっとも、凍結変性を抑制するのにトレハロースだのなんだの入れたりすることも多いは多いのですがね。

3.社会的な時短ニーズ

 先日「20代の約半数が電子レンジで加熱することを自炊だと考える」というリリースがありました。

 簡便調理も昔からのニーズですが、最近は特にその傾向は強く、ナッシュという冷凍弁当が急速に売り上げを伸ばしていたり、マルハニチロのWildishシリーズのように温めて袋ごと食べるとか、ニップンのよくばりシリーズのような定食タイプのものなど、新しい潮流も出てきている。
 よくばりシリーズは自分も在宅勤務の時とかによくお世話になっているけど、名前と裏腹に500kcal以内で押さえてるの、ホント分かってると思う。

 こうした潮流もあってか、小型冷凍庫も家電量販店でよく見かけるようになってきた。今度家電量販店行くことがあったら見てほしいんだけど、冷蔵庫の脇のコーナーにそれなりのスペースで小型冷凍庫のスペースがある。

 特に見るのがスリムタイプ。完全にマンションでの需要を取りに行ってるなと思うよね。下のやつとかは幅35cm以内で100Vで、スペース的にも入りそうだし電源も取れる。というか、我が家でも真剣に導入を考えている。

 売り場でも、イオンが「@FROZEN」というクソデカ冷凍食品専門業態を作ったり、1つ何千円もするような高級路線の商品も出始めている。

 さらに世相を言えば、もう今の親世代って弁当の中に冷凍食品あるのが当たり前の世代だからね。僕もそうだけど。冷凍食品に対する嫌悪感とか忌避間みたいなもの、上の世代にはある人も多いみたいだけど、僕ら世代は「いや自分食ってたし」みたいな心理的なハードルの低さもあるよね。

 大量に冷凍食品をストックして、レンチンするだけという流れは、今後ますます強まっていくと思います。

4.輸出対応

 冷凍食品の最大のメリットは当然長期保管できること。長期保管できると何が出来るかというと、輸出が出来るようになるんだな。

 昨今の円安の流れ、それから世界と比較した時の日本の食品メーカーの技術を考えると、加工食品を輸出する流れは強まるのではないかと想定します。

 そもそも、今後日本はどんどん人口が減少していくマーケット。なので、売り上げや数量を増やそうと思うと海外進出が必須になっていく。
 そんなとき、現地で工場を建てるほどの資本はなくても、もし冷凍食品を輸出できるのであれば海外のマーケットを狙えます。すでに日系スーパーや日本食レストランには結構入っているみたいだけどね。

 以上が、今後10年の現実的なトレンドは冷凍じゃないかなと考える理由です。冷凍技術を持つ会社と持たない会社、その中でも技術の差っていうのが、今後の未来を分けていくんじゃないかな。


 まぁ、それはそれとしてフードテック革命は食品業界に携わりたい人には必読書というか基本のキだと思うので、紹介しとくね……。


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