アジア日記#06【ひとりじゃ食べきれない程のご飯が運んできてくれた友情】
チェンマイの宿に着いた。
この宿に泊まるのは2回目。
「久しぶりだね!」
そうやって声をかけてくれる人たち。
1年前に出会ったゲストハウスで働くみんながまだそこにいた。
お腹を空かせたわたしは、チェックインをそそくさ済ませ、街へ出る支度をする。
1年前にこの街を訪れた時に1度だけ訪れた、小さなタイ料理のお店がふと頭に浮かんだ。
またあの店に行こうと思い、ゲストハウスのお兄さんにそのお店までの行き方を訪ねる。
「あの店はもう閉めちゃったみたい。これからもお店を開ける予定はないらしい。」の第一声。
...。
すごく切なかった。
ベースボールキャップを反対にかぶり、小さな空間の中で大きなフライパンを巧みに操る男勝りのお母さん。今でも覚えている。
ゲストハウスで仲良くなった子に連れていってもらったあの店。持ち帰りオンリーのあの店。
宙に舞うスパイスや煙で目が開けられなかったあの記憶も蘇る。
1年でこんなにも変わるんだ。
"ずっとそこにある"
そんな確証なんてどこにもないんだなぁ。
ひしひしと、そう感じた。
変わりゆくこの街への悲しさと共にゲストハウスを出る。
フラフラと道を歩いていると美味しそうな料理を掲げた看板が。
ちょっと高いけど、お腹が空いてるわたしに値段なんて考えてる余裕はない。
目に留まった料理を指差して、
「これお願いします!こっぷんかぁ〜!(ありがとう)」
すごく笑顔が素敵な、少し英語が話せるお姉さん。しばらくして、わたしのご飯を片手にキッチンから戻ってきた。
その手にはわたしが注文したご飯の他に、袋いっぱいのトムヤムクンが。
(トムヤムクン、オーダーしてないんだけど...)
コミュニケーションが噛み合ってなかったのかも。でもね、そんなことなんてどうでもいいぐらい素敵な笑顔だったの。心が穏やかなのが伝わってくる。
そんなわたしは大量のタイ料理が入った袋を片手にゲストハウスへ戻る。
こんなにいっぱいどーしよう。
そんなわたしの目の前に、スマホに没頭する女の子が。
「ねぇ!間違ってたくさん注文しちゃったから一緒に食べようよ!」そう声を掛けた。
「いいね!」と返事をくれた。
ご飯を食べながら、会話が進む。
名前、国、旅の期間、次の目的地など、
旅人なら何度も聞く、そして聞かれる質問たちを使って、お互いのことを少しずつ知っていく。
話していると分かったのが、
わたしと彼女はバンコクから同じ飛行機に乗ってこの街まで来たってこと。
"飛行機でも搭乗ゲートでもお互いを見かけなかったのに、ここ(ゲストハウス)で会うなんて不思議だねっ"
"人生ってひょんな事が起こるよね!"
2人でそう笑い合った。
そんな彼女の名前はヤスミーナ。オランダ人。
レストランのお姉さんが間違ってご飯を大量に作ってなかったら、わたしは彼女に声を掛けてなかったかもしれない。
なんなら、
バンコクの予定を切り上げてなかったら、このレストランにも行ってなかっただろうし、彼女に出会うチャンスもなかったと思う。
苦しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと。そういうひとつひとつが重なり合い、人生の中にストーリーが生まれる。
苦しみ、悲しみ。その中にいるときは、どうしても悲観的になってしまう。
"何でわたしだけ!" そう思ってしまう。
だけど、振り返ってみると
そのひとつひとつがあったから、
"今の幸せに繋がっている" そう思える。
点と点が繋がり、ひとつの線になるこの瞬間。
点を点としてみるのではなく、
「どんな線になっていくのだろう。」
物事をそういう長い目で見ることがすごく大切なんだと改めて気付いた。
ひょんなことで生まれた友情に、感謝。
わたしをここまで連れてきてくれた、ひとつひとつの小さな出来事に、感謝。
新たに生まれたこの「点」が、どんな点を生み出し、そして、どんな線を描いていくのだろう。
楽しみだなぁ。
た す く。
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