物語よ、ありがとう。

昔から、小説、映画、舞台、アニメーション、マンガなど、とにかく「物語」がないと生きていけない人間だった。

世の中には、そうでない人もたくさんいると知って驚いている次第である。そんな私だから、一時的にでも物語のなかで生きる、俳優という道を選んだのかもしれない。

あらゆる現実について、楽しい面を見出すことが得意だと思っていたけれど、そんな私ですら今自分のおかれた状況は厳しい。すべてを捨てて逃げ出したくなることもある。

そんななか、やっぱり私はあらゆる「物語」に救われている。最近でいえばNHKの大河ドラマ『光る君へ』や朝ドラ『虎に翼』、マンガ、小説。

それに、息子とみているEテレにも救われている。「おかあさんといっしょ」で流れる音楽、おにいさんおねえさんたちの表現力、衣裳やメッセージはすばらしい！

ほかにも、私は美術展へ行くのが好きなのだが、1枚の絵のなかにも「物語」がある。音楽のなかにも、「物語」がある。

最近、寝る前に息子と、モノマネアーティスト「よよよちゃん」の歌配信を観るのにハマっている。

よよよちゃんの歌唱クオリティはさることながら、配信の世界観がよく作り込まれていて、素晴らしい。もはやモノマネの歌動画という域を超えて、ひとつの「物語」になっているのである。

こんな感じで、私と出会ってくれる「物語」は、いつも私を救ってくれる。本当にありがとう。この世界に「物語」というものがあってくれてよかった。ほんのひととき、誰かを人生を生きられるような、そんな存在があって、私は幸運である。

(Day.26)

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ほぼ毎日エッセイ『わたしに翼』｜糸崎 舞｜文化と暮らしのライター｜note