伊藤まり

2020年に短歌をはじめました。2021年「短歌人」入会。あかるくたのしく歌をつくりた…

伊藤まり

2020年に短歌をはじめました。2021年「短歌人」入会。あかるくたのしく歌をつくりたいです。

記事一覧

短歌人 月例作品 2024年7月号

自転車は風にほおずりする道具すこしくもったつつじの匂い 外来種どうしと思う東京から来たわたくしとナガミヒナゲシ 数十年に一度だけ咲く竜舌蘭が浜名湖花博会期中に咲…

伊藤まり
3週間前
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短歌人 月例作品 2024年6月号

安全はすこしくるしい揺れるたびシートベルトは首に食いこむ ゆっくりと咲く花もあり四十歳越えてじょうずになるアイライン 東京ドーム一杯分の原器として東京ドームを子…

伊藤まり
1か月前
7

短歌人 月例作品 2024年5月号

来年のために手帳に書いておく鼻のカメラは右の穴から 春を呼ぶミモザと秋に嫌われるセイタカアワダチソウは似ている 唐突に春が来ていてとりあえず圧力鍋にポトフをつく…

伊藤まり
2か月前
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短歌人 月例作品 2024年4月号

もう膝におさまりきらない五歳児は大型犬のように甘える 国籍で差別するのはあれだけどブラジル産の鶏が苦手だ かっちりと縦列駐車が決まるときここまで走った十年思う …

伊藤まり
3か月前
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短歌人 月例作品 2024年3月号

冬至の日の午後はほんわりあかるくてもらった柚子を配ってまわる 西日さす冬の三時はいまは亡き人らに会える魔法の時間 天上の高柳先生にひとたばの野百合のような歌を届…

伊藤まり
5か月前
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短歌人 月例作品 2024年2月号

しゅうまいに添えるからしのようなこと守り抜くためわたしは生きる 冬空に溶けてなくなる富士の青うつくしすぎる時限爆弾 ブロッコリーのような街路樹われわれは神の弁当…

伊藤まり
5か月前
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短歌人 月例作品 2024年1月号

全員が正気であると仮定して逢魔が時の渋滞進む 革巻きのステアリングに身を慣らす馬具を手にした騎士の心地で 卓上に直方体の水があり金魚四匹めらめらと舞う 見ていた…

伊藤まり
6か月前
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東京のうた一首鑑賞◆東京にいるというよりサブスクで日々をレンタルしている気分/ショージサキ

 東京にいるというよりサブスクで日々をレンタルしている気分   ショージサキ 「短歌研究」2022年7月号  地方に住んでいてたまに東京の街に出ると、若い人(と…

伊藤まり
6か月前
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短歌人 月例作品 2023年12月号

金色の稲の穂と穂が触れあってさわさわさわと秋が聴こえる 勲章の内示を受けて胸中に光らせたまま父は逝きたり 秋空にチョークで描いたリュウグウノツカイみたいに長い長…

伊藤まり
7か月前
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短歌人 月例作品 2023年11月号

新幹線は翼をもがれた飛行機で終わることなき高速滑走 七、八年会わない祖母が亡くなって造花の菊のようなかなしみ MADE IN USSRと刻印あり義父の遺したマトリョーシカに…

伊藤まり
8か月前
10

短歌人 月例作品 2023年10月号

羽化しきれなかった蟬に小蟻らは囲み取材のごとく群がる 漆黒のブローチのごとかがやける角を失いたるかぶとむし 七月盆と八月盆のまんなかで子らと見つける天使の梯子 …

伊藤まり
10か月前
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短歌人 月例作品 2023年9月号

口腔外科医はハズキルーペをかけ直すこれからわれの歯を砕くため らっきょうを剝いたら白い 友はなぜ弁護士資格を返上したか 墓石の汚れを流す要領でシンクの水栓レバー…

伊藤まり
11か月前
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短歌人 月例作品 2023年8月号

東京のビルは空より青冴えて中に行き交う人は見えざり ペチュニアの咲かない庭に夏が来て老母はひとり二階屋に住む 花瓶にて枯れゆく薔薇を見送って蘭の一輪ゆっくりひら…

伊藤まり
1年前
7

短歌人 月例作品 2023年7月号

いっせいに躑躅は叫ぶこのまちの初夏はわれらが占拠したりと 二、三票欲しいと思う富士市議選十人落ちる激戦なれば とれたての素材を切って盛りつける料理と短歌はすこし…

伊藤まり
1年前
3

短歌人 月例作品 2023年6月号

律儀なる一本の消化管として胃カメラ室の前に待ちおり 街じゅうに白木蓮がため息をこぼして春のあかるい夕べ 一周忌過ぎればふっと思うこと少なくなりて父の声遠し 漢方…

伊藤まり
1年前
5

短歌人 月例作品 2023年5月号

労働者の燃料として消費され缶コーヒーの残骸たまる ヒヤシンスあたまばかりがおもたくて春の祝日どうしてねむい みっちりと花芽を見せる球根に会陰切開の痛みを思う ヒ…

伊藤まり
1年前
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短歌人 月例作品 2024年7月号

短歌人 月例作品 2024年7月号

自転車は風にほおずりする道具すこしくもったつつじの匂い

外来種どうしと思う東京から来たわたくしとナガミヒナゲシ

数十年に一度だけ咲く竜舌蘭が浜名湖花博会期中に咲く

新しい教科書てかてか輝いて緑の季節が走りはじめる

まだ摩耗してない牙をひからせていちごの赤にかぶりつく子ら

戦没者のように思えりコロナ禍に会えないままで亡くなったひと

短歌人 月例作品 2024年6月号

短歌人 月例作品 2024年6月号

安全はすこしくるしい揺れるたびシートベルトは首に食いこむ

ゆっくりと咲く花もあり四十歳越えてじょうずになるアイライン

東京ドーム一杯分の原器として東京ドームを子に見せており

春休みの竹下通りにゆめいろの虹の味する綿菓子を食む

元夫にきわめてよく似た人物をオペラシティのカフェに見つける

わたくしの臓器の寿命を感じつつ子らのとなりで飲むコカコーラ

短歌人 月例作品 2024年5月号

短歌人 月例作品 2024年5月号

来年のために手帳に書いておく鼻のカメラは右の穴から

春を呼ぶミモザと秋に嫌われるセイタカアワダチソウは似ている

唐突に春が来ていてとりあえず圧力鍋にポトフをつくる

手際よくザラメを入れてスイッチを押せばたちまち甘い綿雲

春が来るたびに脱皮をくりかえしふくらんでいく未来の大人

おもむろにあなたの声が響きだすチェロの独奏曲の重さで

短歌人 月例作品 2024年4月号

短歌人 月例作品 2024年4月号

もう膝におさまりきらない五歳児は大型犬のように甘える

国籍で差別するのはあれだけどブラジル産の鶏が苦手だ

かっちりと縦列駐車が決まるときここまで走った十年思う

ひんやりと眠るハンドルあたためて鋭く鳴らす冬のエンジン

なごやかに楽しき法事の人去りて片づけるときに清き静寂

わたしたちスノードームのまんなかの二体の人形として寄り添う

短歌人 月例作品 2024年3月号

短歌人 月例作品 2024年3月号

冬至の日の午後はほんわりあかるくてもらった柚子を配ってまわる

西日さす冬の三時はいまは亡き人らに会える魔法の時間

天上の高柳先生にひとたばの野百合のような歌を届ける

トラックを洗うしぶきもまぶしくて仕事納めのひとのあかるさ

だしぬけに原稿用紙を丸めれば大文豪になった心地す

東海道新幹線で富士山が大きく見えるあたりにいます

短歌人 月例作品 2024年2月号

短歌人 月例作品 2024年2月号

しゅうまいに添えるからしのようなこと守り抜くためわたしは生きる

冬空に溶けてなくなる富士の青うつくしすぎる時限爆弾

ブロッコリーのような街路樹われわれは神の弁当箱のごましお

屈折の総体として虹がありすべてのことは程度問題

やわらかな小春日和につつまれてどこにもいない父に会いたい

三人の医師が集まり引っぱって上から押して産まれたわが子

「短歌人」2024年2月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2024年1月号

短歌人 月例作品 2024年1月号

全員が正気であると仮定して逢魔が時の渋滞進む

革巻きのステアリングに身を慣らす馬具を手にした騎士の心地で

卓上に直方体の水があり金魚四匹めらめらと舞う

見ていたら小一時間がたっていた琉金の尾のひれのひらひら

指先にいつもHOPEをはさんでた父の書斎にのこる灰皿

LEDのあかりはすこし疲れるな わたしの無駄が照らされるから

「短歌人」2024年1月号 月例作品 伊藤まり

東京のうた一首鑑賞◆東京にいるというよりサブスクで日々をレンタルしている気分/ショージサキ

東京のうた一首鑑賞◆東京にいるというよりサブスクで日々をレンタルしている気分/ショージサキ

 東京にいるというよりサブスクで日々をレンタルしている気分
  ショージサキ 「短歌研究」2022年7月号

 地方に住んでいてたまに東京の街に出ると、若い人(とりわけ若い女性)の多さに圧倒される。2022年短歌研究新人賞受賞作「Lighthouse」からの一首。一連を通じて、東京に暮らす主体のふわふわした浮遊感や性に関するゆらぎなどが感じられる。「無職だと地元で言えばクッキーの型にはめられ鬼の

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短歌人 月例作品 2023年12月号

短歌人 月例作品 2023年12月号

金色の稲の穂と穂が触れあってさわさわさわと秋が聴こえる

勲章の内示を受けて胸中に光らせたまま父は逝きたり

秋空にチョークで描いたリュウグウノツカイみたいに長い長い雲

いわし雲見上げるわれは水底のタカアシガニの視線を持てり

過ぎ去ってゆくものだけがうつくしい少し涼しい九月の朝に

「短歌人」2023年12月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年11月号

短歌人 月例作品 2023年11月号

新幹線は翼をもがれた飛行機で終わることなき高速滑走

七、八年会わない祖母が亡くなって造花の菊のようなかなしみ

MADE IN USSRと刻印あり義父の遺したマトリョーシカに

霧ヶ峰 額をなでる涼風が我が家を美しき高原となす

くろがねのMRIに吸い込まれ不協和音に叩かれまくる

「短歌人」2023年11月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年10月号

短歌人 月例作品 2023年10月号

羽化しきれなかった蟬に小蟻らは囲み取材のごとく群がる

漆黒のブローチのごとかがやける角を失いたるかぶとむし

七月盆と八月盆のまんなかで子らと見つける天使の梯子

錆びついた配管を身に巡らせて夕闇に啼く製紙工場

空の青と富士の蒼とをくらべては見とれるうちに夏は終わりぬ

「短歌人」2023年10月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年9月号

短歌人 月例作品 2023年9月号

口腔外科医はハズキルーペをかけ直すこれからわれの歯を砕くため

らっきょうを剝いたら白い 友はなぜ弁護士資格を返上したか

墓石の汚れを流す要領でシンクの水栓レバーをすすぐ

枝豆に茗荷とねぎの冷やっこ机のうえに夏を並べる

アガパンサスが恥ずかしそうに揺れている花火にはまだ早かったから

「短歌人」2023年9月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年8月号

短歌人 月例作品 2023年8月号

東京のビルは空より青冴えて中に行き交う人は見えざり

ペチュニアの咲かない庭に夏が来て老母はひとり二階屋に住む

花瓶にて枯れゆく薔薇を見送って蘭の一輪ゆっくりひらく

なみなみと初なつの水を引き入れて田は銀色の空を映せり

カホンという楽器があって公園の芝生広場によく似合います

「短歌人」2023年8月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年7月号

短歌人 月例作品 2023年7月号

いっせいに躑躅は叫ぶこのまちの初夏はわれらが占拠したりと

二、三票欲しいと思う富士市議選十人落ちる激戦なれば

とれたての素材を切って盛りつける料理と短歌はすこし似ている

AIは見てきたような嘘をつき昭和前期の歌人のわたし

寺子屋の復元模型で永遠に学びつづける人形の子ら

「短歌人」2023年7月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年6月号

短歌人 月例作品 2023年6月号

律儀なる一本の消化管として胃カメラ室の前に待ちおり

街じゅうに白木蓮がため息をこぼして春のあかるい夕べ

一周忌過ぎればふっと思うこと少なくなりて父の声遠し

漢方は食前に飲む香り高い前菜として桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

心には涸れることなき泉ありいちばん好きな曲を聴くとき

「短歌人」2023年6月号 月例作品 伊藤まり

短歌人 月例作品 2023年5月号

短歌人 月例作品 2023年5月号

労働者の燃料として消費され缶コーヒーの残骸たまる

ヒヤシンスあたまばかりがおもたくて春の祝日どうしてねむい

みっちりと花芽を見せる球根に会陰切開の痛みを思う

ヒヤシンス風を信じる子と書けば昭和歌謡のようにせつない

春雲を肩にまとった富士山は二メートルほど首すじ伸ばす

「短歌人」2023年5月号 月例作品 伊藤まり