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登記事務を管掌する国家機関の変遷と登記申請行為の性質論

旧登記法は,登記事務を取り扱う国家機関を,「登記所」と呼び,登記事務は治安裁判所が取り扱うものとした。これは,権利義務を強固にするには,法律に明るい裁判官を用いるのを良しとするプロイセン(ドイツ)の制度に範を求めたものとされている。

この点,従来の公証制度が内務省の下,戸長により管掌されていたのと大きく異なる。そのため,元老院の審議でも登記の所轄を内務省とするか司法省とするかで激論が戦わされた経緯がある。

旧不動産登記法は,審議に先立つ予決議案として,「1.登記所は従前の如く区裁判所と定むること 2.登記事務については専任の登記判事を置くこと」を議決し,それに基づき「区裁判所又は出張所」が登記事務を取り扱うこととした。なお,登記判事は,実現されず,裁判所書記官が登記官吏となった。

このように裁判所が登記事務を行う場合,登記手続は,非訟事件手続の一種となり,登記申請行為は,訴訟行為の一種としてその性質を捉えるべきものであった。 

しかし,1947年(昭和22年)「司法大臣」を「法務総裁」に「司法省」を「法務庁」に読み替える改正を行い,登記事務が裁判所から行政府に移管された以降は,上記のような割り切りができなくなり,登記申請行為を公法上の行為の一種として捉えなければならないことになったのである。

伊藤塾司法書士試験科 講師 蛭町浩

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フレーム・コントロールの原点 登記制度の視かた考えかた(弘文堂)


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