見出し画像

北谷馨の質問知恵袋 「「株主リスト」の添付の要否」に関する質問

今回は、「株主リスト」の添付の要否」に関する質問です。

Q:「新株予約権の行使」の登記において、「資本金に組み入れない額を証する株主総会議事録」を添付する場合、当該株主総会議事録に関する株主リストはなぜ添付不要なのでしょうか。

株主リストは、登記すべき事項について株主全員の同意又は種類株主全員の同意が必要となる場合(商業登記規則61条2項)、登記すべき事項について株主総会決議又は種類株主総会決議が必要となる場合(同3項)に添付が必要となります。
 
ただし、

・当該決議が直接登記すべき事項につき決議するものではなく、登記すべき事項との関係が間接的なものにとどまる場合
・登記官においてその決議の有効性を審査する必要性が低い場合
には、株主リストの添付が不要となります(登記研究832号)。

それを踏まえて、「新株予約権の行使」の事例について検討します。

・第1回新株予約権を発行する株主総会決議をした。
・この議事録中に、第1回新株予約権の詳細な内容が記載されている。
・その中に、「将来この新株予約権が行使された際、2分の1は資本金に計上しません」という定めがある。
・第1回新株予約権が実際に発行され、Aさんが新株予約権を取得した。
・その2年後、Aさんが第1回新株予約権を行使した。

ここで問題となる登記は、Aさんが新株予約権を行使したことによる、
「新株予約権の行使による登記(発行済の増加・資本金の額の増加等)」です。
 
この登記において、資本金の額の増加の登記をしますが、2分の1は資本金として計上しないことになります。最大1000万円資本金の額を増加できる場合だとすると、その2分の1である500万円だけを資本金に計上するということです。
 
では「2分の1は資本金に計上しない」という旨はどこに書かれているかと言うと、「第1回新株予約権の発行決議をした際の株主総会議事録」です。その株主総会議事録を、「2分の1は資本金に計上しない」ことの立証書面として添付します。
この「株主総会議事録」については、株主リストの添付は不要となります。
添付する株主総会議事録は、2年前の「新株予約権の発行決議」をした際の議事録ですが、これは、今回申請する「新株予約権の行使」の登記との関係では、「直接登記すべき事項につき決議するもの」とは言えないと考えられるからです。
 
このように、株主総会議事録を添付するすべての場合において株主リストが必要になるというわけではありません。「直接登記すべき事項につき決議するものとは言えない」というときは、株主リストは不要です。
例えば、取締役の「任期満了による退任」の登記において、株主総会議事録を添付しますが、これは退任日を証するために添付しているものであって、「株主総会で任期満了退任を決議している」というわけではありません。よって、この株主総会議事録に関する株主リストの添付は不要になります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?