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講師が選ぶ『ベストセレクト過去問』会社法・商法~北谷馨講師セレクト~

当シリーズ『講師が選ぶベストセレクト過去問』では、「これはいい問題!」「この問題は今年の試験で大事!」といった観点から、「司法書士択一式厳選過去問集-2021ver-」より講師が選んだ過去問をリレー形式で紹介していきます。

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の北谷馨です。

【1】今回のベストセレクト過去問

私のセレクトした過去問は、平成20年第23問の株式会社の機関(代表取締役が法令又は定款に違反する行為をした場合)を問う問題です。

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【2】本問の考察

会社法を学習する際は、「比較・場合分け」の観点から知識整理をしていくことが重要です。本問もしっかりと知識を整理して記憶できていたかどうかが「ポイントの1つめ」です。
それに加えて、「連想」も重要な観点になります。「AならばB・BならばC」という連想です。特に「機関」に関してはこの連想が命とも言えます。最も典型的な連想は「公開会社→取締役会設置会社」でしょう。

では、本問の問題文の「本文」を見てみましょう。

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上記問題文より、本問は「取締役会設置会社で、会計限定監査役がいる会社」ということになります。
しかし、ここから連想が必要になります。
「会計限定監査役がいる会社」ということは?

「非公開会社」です。
公開会社では、会計限定の定めはできないからです。
よって、本問の会社は「非公開会社で、取締役会設置会社」という分類になるのです。もっと言えば、「会計監査人を置いていない会社」であり、「非大会社」、という連想もできます。

では、「イ」を見てみましょう。

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「6か月前から」という要件があるのは、公開会社だけです。非公開会社では株式の取得自体容易ではないので、保有期間の制限を設ける必要はないということです。よって、本問の会社は非公開会社であるため「当てはまらない」という答えになります。

なお、ア、ウ、エ、オは「業務監査権限のある監査役か、会計限定監査役か」で結論が違ってくる、知識の「比較・場合分け」が必要になる問題です。

【4】多くの受験生を苦しめた「連想」

「連想」が要求される有名な問題が、「平成23年第31問」の記述アです。

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「監査委員会の委員は執行役を兼ねられない」という規定はありますが(400条4項)、指名委員会についてはこのような規定はないので、「記述アは誤り」と判断してしまった受験生が非常に多かったようです。
しかしこれは「正しい」になります。

「各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない」という話は、大半の受験生が知っています(400条3項)。
「執行役は、社外取締役になれない」という話も、大半の受験生が知っています(2条15号イ)。
しかし
「指名委員会の委員の過半数は,執行役を兼ねることができない。」
となると、急に正答率は下がりました。

【5】最後に

このような「連想」は、テキストによるインプットだけではなかなかできるようになりません。過去問や答練の問題を解いて練習していくことが有効です。問題を解く中で、多くの気づきがあるはずです。
このような意識を持ちつつ日々過去問に取り組んでもらいたいと思います。

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