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債務者死亡による元本確定後の債務引受

前回,出題の予想に使う登記の専門雑誌として日本司法書士会連合会が発行している「月報司法書士」(以下「月報」)の中で注目すべき記事として,不動産登記法改正等対策部,商業登記・企業法務対策部が作成している「付箋」を紹介しました。

付箋の記事内容は,内容の信頼性だけでなく,実務に役立つものとして出題予想に直結する内容となっているからです。

2022(令和4)年9月号には,「債務者死亡による根抵当権確定後の債務引受-第四の類型」が取り上げられています。これは,相続による元本確定後の根抵当権の債務を集中させる登記に関する記事です。

8年前の月報2014(平成26)年4月号で債務者A,相続人BCの状況で,①BがCの債務を免責的に引き受けて相続人の1人が単独債務者となる第一類型(原因「年月日Cの債務引受」変更後の事項「債務者B」),②相続人BC全員を連帯債務者とする第二類型(原因「年月日BはCの及びCはBの債務を併存的引受」 変更後の事項「連帯債務者BC」),③相続人の1人BがCの債務を併存的に引受けCの債務をBCの連帯債務とする第三類型(原因「年月日Cの債務の併存的引受」変更後の事項「連帯債務者B」)が紹介されていました。

これを踏まえ,今回の記事は,被担保債権のうち平成30年3月3日金銭消費貸借についてBがCの債務を引き受け,平成31年2月2日金銭消費貸借についてCがBの債務を引き受けた場合,原因を「令和○年○月○日(あ) 平成30年3月3日金銭消費貸借につきCの債務の免責的引受け,(い) 平成31年2月2日金銭消費貸借につきBの債務の免責的引受」とし,変更後の事項を「債務者(あ)につきB (い)につきC BC」とすべきとしこれを第四類型と位置づけています。

変更後の事項の末尾の「BC」の記載は,債務引受の対象とならない債務についての債務者はBCであることを明らかにするものであり,債務引受けの対象とならない債務がなければ記載は不要との見解が示されています。

債務者死亡後6か月の経過による根抵当権の元本確定の論点は,平成10年,平成18年,平成27年の3回出題されているAランク論点です。平成10年は,浮動期間中の極度額の減少,それを経過した後の一部順位放棄の受益と追加設定の登記不可が問われ,平成18年は元本確定登記に代えて相続による変更登記と債権譲渡の連件申請処理であり,平成27年は相続による変更登記と一部代位弁済が問われています。

これら出題の手口を踏まえれば,根抵当権の元本確定登記に代えて相続による変更登記と債務引受は十分に出題が予想される論点となっており,上記4つの類型のどれが出題されても対応できるように準備をすべきことになります。

伊藤塾司法書士試験科 講師 蛭町浩 

前回記事 通説化した「株主総会による代表取締役の予選」はこちら

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