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北谷馨の質問知恵袋 「登記権利者の名変」に関する質問

今回は、「登記権利者の名変」に関する質問です。

Q:「遺産分割」を原因とするCD持分全部移転の登記の前提として、登記権利者であるBの名変(住所変更登記)がされている問題がありました。この名変は必要なのでしょうか。

「名変=登記義務者について必要なもの」と思い込んでしまっている方が多いので、今回は「登記権利者の名変」について確認します。

質問の事例は以下のようなものです。

甲土地の所有者であるAが死亡し、「相続」を原因としてAからBCDへの所有権移転登記がされています。その後、BCD間の遺産分割協議により、Bが単独で甲土地を相続することとなりました。
この場合、「年月日遺産分割」を登記原因として、権利者B・義務者CDの共同申請により「CD持分全部移転」の登記を申請することになります。

ここで問題になるのが、当該移転登記の前に「権利者B」に住所変更があった場合、前提としてBの名変(住所変更登記)が必要か、ということです。

答えは「必要」です。
「名変=登記義務者について必要なもの」と考えてしまっている方には不思議な結論に感じるかも知れませんが、「登記権利者について名変が必要になる場面もある」ということを今回は押さえていただきたいと思います。

例えば、Bの登記記録上の住所が「大阪」で、申請時の住所が「東京」とします。
仮に住所変更登記を申請せずに、いきなり「CD持分全部移転」の申請をするとなると、

目的 CD持分全部移転
原因 年月日遺産分割
権利者 持分3分の2 東京 B
(以下略)

という記載になります。
そうすると、登記官としては、共有者として登記されている「大阪B」と、今回の登記権利者である「東京B」は別人と判断し、法25条4号の「申請の権限を有しない者の申請によるとき」に該当して却下となります。
「遺産分割」を原因としてCD持分を移転する場合の登記権利者は、共有者として登記されているBである必要があります。「遺産分割」は共有者間で行うものであり、共有者でない者に対して遺産分割によって移転することはできないからです。そのため、前提として、共有者であるBの登記記録上の住所を「大阪」から「東京」に変更しておく必要があるのです。

今回は「遺産分割」の事例でしたが、同じような考え方から、「登記権利者について名変が必要になる場面」は色々あり得る、ということはお分かりいただけるでしょうか。要するに「登記権利者となる者=登記されている者」でなければならない場合です。
・「遺産分割」「共有物分割」「持分放棄」のように「共有者の誰かが登記権利者となる」場合
・「抵当権抹消登記」のように「設定者(所有権登記名義人)が登記権利者となる」場合
・仮登記の本登記のように「仮登記名義人が登記権利者となる」場合

などです。
上記のような、「今回の申請の登記権利者は、現在登記されているこの人でいないとおかしいよね」という登記を申請する場合は、登記権利者において名変が必要になるので、ご注意ください。

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