見出し画像

北谷馨の質問知恵袋 「遺贈と農地法の許可」に関する質問

今回は、「遺贈と農地法の許可」に関する質問です。

Q:農地の「遺贈」について、農地法の許可が必要な場合があったと思いますが、その場合、遺言者死亡後に許可が到達したときは、いったん相続登記を入れる必要があるでしょうか。

まず、農地について「遺贈」を原因として所有権移転登記を申請する場合は、「相続人以外の者に対する」「特定遺贈」のみ、農地法の許可が必要になります。よって、以下の話は「相続人以外の者に対する」「特定遺贈」を前提とします。
 
Aが、農地である甲土地をBに遺贈する旨の遺言をしており、令和5年11月1日に死亡したとします。その後、令和5年11月20日に農地法の許可が到達したとしましょう。Aの相続人がCだとして、必要な登記は以下①②のどちらでしょうか。

①「令和5年11月20日遺贈」を原因とする、AからBへの所有権移転登記
②1件目「令和5年11月1日相続」を原因とする、AからCへの所有権移転登記
 2件目「令和5年11月20日遺贈」を原因とする、CからBへの所有権移転登記 

理屈から考えると、Bへ所有権が移転するのは11月20日なのだから、いったんCへの相続登記を入れる②が正解のように思えます。
しかし、正解は①になります。

遺贈の場合、農地法の許可が遺贈者の死亡後に得られても、相続登記をする必要はなく、「令和5年11月20日遺贈」を原因として、いきなりAからBへの所有権移転登記をすることになります。令和5年11月1日以降は死者であるAが所有者として登記されていることになってしまいますが、あくまで遺贈の対象となっている不動産ということで、相続登記は不要という扱いになっています。
 
なお、これは「遺贈」の場合の特殊な扱いなので、これが「遺贈」ではなく「売買」であれば、相続登記は必要になります。

令和5年10月20日、AB間で農地である甲土地の売買契約を締結したが、令和5年11月1日、農地法の許可到達前に売主Aが死亡したとします。その後、令和5年11月20日に農地法の許可が到達したとします。
この場合は、

1件目 「令和5年11月1日相続」を原因とする、AからCへの所有権移転登記
2件目 「令和5年11月20日売買」を原因とする、CからBへの所有権移転登記

の2件を申請することになります。
こちらは、実体上の所有権移転の流れをそのまま反映しているものになります。
「申請件数」に関わるところなので、しっかりと確認しておいてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?