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【択一式】設立に関する登記(髙橋講師)

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回の問題 ~設立に関する登記~

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【1】第1問の解説 ~払込みを証する書面~

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発起設立の場合には,設立時代表取締役又は設立時代表執行役の作成に係る払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面に払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを合てつしたものを払込みがあったことを証する書面とすることができる(法47条2項5号,平18.3.31民商782号通達)。そして,当該預金通帳の写しについては,その記載された履歴から払込金額に相当する額が口座に入金された事実を確認することができれば足り,登記申請日においてその口座に払込金額の残高が計上されている必要はない(ハンドブックp113)。

なお,募集設立の場合には,単に入金があった事実を証する書面ではなく,現在の払込金額の残高を証明する払込金保管証明書(会64条1項)を添付しなければならない(法47条2項5号括弧書)。

〔よくある質問 ~払込金受入証明書と払込金保管証明書の違い~〕
Q.  発起設立の「払込金受入証明書」と募集設立の「払込金保管証明書」はどのように違うのでしょうか?
A.  発起設立の「払込金受入証明書」は払込金の受入れを証明するものであるため,入金の事実が確認できるものであれば足り,登記申請の時点でいくらの預金があるかの立証は不要です。発起設立は仲間内で資金を出し合う形の設立であるところ,発起人が会社成立前に払込金を設立費用に流用することができるため,入金の事実が確認できればそれでよいのです。これに代えて添付する預金通帳の写しについても,記載された履歴から払込金額に相当する額が口座に入金された事実を確認することができれば足り,登記申請日においてその口座に払込金額の残高が計上されている必要はありません(ハンドブックp113)。
これに対し,募集設立の「払込金保管証明書」は,払込金の保管を証明するものであるため,単に入金があった事実を証するものではなく,現にいくらの預金があるかを証明するものです。募集設立は,発起人の他に株式引受人を募集する形の設立であるところ,設立手続に直接関与しない設立時募集株式の引受人の払い込んだ預金の保管状態を明らかにして,払込金が不当に流用されるのを防ぐため,現にいくらの預金があるかの証明が必要になるのです。

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【2】第2問の解説 ~就任承諾書としての援用~

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発起設立の場合には,定款で設立時取締役を定めることができる(会38条4項)。定款において発起人が設立時取締役に定められている場合において,当該設立時取締役が発起人として定款に署名又は記名押印しているときは(会26条1項参照),設立の登記の申請書には,当該定款を当該設立時取締役の就任を承諾したことを証する書面として援用すれば,別途,当該設立時取締役の就任承諾書を添付する必要はない(昭39.8.22民事甲2875号回答)。

〔趣旨〕発起人は定款に署名又は記名押印しなければならず(会26条1項),これにより設立時役員への就任承諾の意思は明確であると考えられるからである。

【3】第3問の解説 ~認証する公証人の所属~

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公証人による株式会社の定款の認証の事務は,設立しようとする株式会社の本店の所在地を管轄する(地方)法務局に所属する公証人が取り扱う(公証人62条の2,会30条1項)。したがって,設立しようとする株式会社の本店の所在地を管轄する(地方)法務局に所属しない公証人が認証した定款を添付して,株式会社の設立の登記を申請することはできない(法47条2項1号,昭28.7.29民事局長回答)。

〔趣旨〕定款の認証の事務を本店の所在地を管轄する(地方)法務局に所属する公証人が取り扱うとしているのは,定款の記載をめぐる紛争が生じた場合に,証拠資料である定款の原本が,どこの公証人役場に保存されているかを明確にする趣旨である。

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