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テキストと過去問の取り組み方~理想と現実の狭間で~

先月の基準点発表後に、北谷講師と髙橋講師による『令和5年度 司法書士試験の基準点と出題傾向から導く効率的な過去問学習法』というYouTubeライブが配信されました。
アーカイブもありますので是非ご覧ください。

こちらの動画で両講師がデータを踏まえて過去問学習について言及しておりますので、蛇足的にはなりますが、私の方からも過去問とテキストについて少し書かせていただければと思います。 

私が今まで受けた資格検定試験の中には、試験対策としてテキストを読んで理解するよりもむしろ過去問をひたすら解いて出題パターンを把握するほうが合格しやすいというものがたくさんありました(知識の習得としてそれでいいのかという是非は別にして、あくまで合格するためにはという考え方に全シフトした場合です)。
司法書士試験はそういった過去問ぐるぐるだけで太刀打ちできる試験ではないということは、上記YouTubeライブの中でも示しているデータ上からも、そして受験生の皆様の体感・経験的にも明らかであることはお分かりいただけるかと思います。 

では過去問は何のために解くのかというと、問題慣れするためというのも理由のひとつかと思います。
テキストというのは、過去問、答練、模試、本試験であれ、すべての問題に関して「元になる知識」が書いてあるものです。ですから、そこにある「元にある知識」をきちんとそのテキストで押さえられさえすれば、その派生系である大量の過去問演習をわざわざする必要はなく、かつ網羅的な学習が可能です。
とはいえテキストでインプットだけしていても、知識はあってもうまく使えない、というケースになってきます。特に民法が顕著ですが、具体的事例になって出題されると状況がなかなか把握できない、何の論点を問われているのか当てはめができないといったことになりがちです。解説を読んで「ああ、これのことか、知ってたわぁ…」となるパターンですね。こうなるとなかなか点数も伸びてきません。そのために過去問をツールとして位置づけ、問題になるとこういう風に問われるんだなという意識と、解く感覚を養う必要があります。 

では過去問を解きまくってアウトプットを続けていけばいいのかというと、今度は「過去問は解けるのに、答練や模試だと点数が取れない…」というパターンに陥りがちです。過去問で問われた論点を単に覚えてしまって、そもそも前提となっている基本的な知識の理解が不十分であったり、周辺知識が抜けてしまっていたり、何か偏りが出てきてしまっている可能性があります。きちんとテキストに戻るという反復学習がいかに重要かということです。
点数に伸び悩みがある方は、ご自身が網羅的な学習をしているか、単に漫然と演習だけを繰り返していないかといった点について注意してみてください。 

インプットとアウトプットのバランスは非常に重要であると考えます。
網羅的な学習をする、ということであれば「全ての過去問を解いて、テキストもすみずみまで理解して覚えればいいんだな!」と思われるかもしれません。それがひとつの理想形ではありますし、伊藤塾でも厳選過去問を推奨していますが、全過去問を解くことを否定しているわけではありません。
ただ、現実問題としてどうでしょうか。
大半の受験生の方は時間が足りないという悩みを抱えています。そしてなにせ試験科目の範囲は膨大です。
多くの過去問を回そうとすると時間の関係で問題を解きっぱなしにしてしまい、テキストに戻って周辺知識を押さえるということもなかなか難しくなります。知識の精度という面でどこか歪がでてくるでしょう。知識は100%の精度にしないと、本試験で力を発揮してくれません。曖昧な知識をたくさん中途半端に集めるよりも、確実な知識を積み上げていくことが肝要です。
限られた時間でいかに効率的に学習して、そして合格するかということを考えて、伊藤塾では厳選過去問↔テキストの網羅的学習をおすすめしています。

短期合格される方はこういった取捨選択や現状把握(自分の現状を考えてどこまでなら出来てどこを切り捨てるか)が上手な方が多いです。理想と現実のギャップを認識した上で、合格するためには何をすればいいか、何をやらないようにするか、そしてインプットとアウトプットのバランスを考えていきましょう。 

なお、記述式も含めた過去問の量に関することは蛭町先生がこちらの記事(何のために過去問を使うのか・・・次を考える素材。)で書かれていますので、あわせて参考になさってください。

伊藤塾司法書士試験科スタッフK

 


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