根抵当権と債務者変更
「根抵当権では、元本確定前のみ債務者の変更が可能」と覚えている受験生も多いと思います。
記述式の問題でよく受ける質問が、「元本確定後の根抵当権なのに,債務者の変更登記をしているが、確定前にしかできないのではないか?」というものです。
これを理解できているかどうかは、根抵当権の本質に関わる非常に重要な問題です。
「元本確定前にしかできない債務者の変更」は、根抵当権者と設定者の契約による、民法398条の4に基づく債務者の変更です。
これは債務引受による債務者変更ではなく、担保される債権が完全に入れ替わるというものです。
元本確定前の根抵当権の根抵当権者をA・債務者をB・債権の範囲を売買取引とします。
債務者をBからCに変更すると、今後はBの債務ではなくCの債務が担保されるようになります。
この後、債務者をBからCに変更した(398条の4)
このように、債務者をBからCに変更すると、担保される債権が全く別のものになります。このような変更ができるのは元本確定前だけです。
一方、「債務引受による根抵当権の変更登記」は元本確定後においてのみ可能です。
元本確定後は抵当権と同じように付従性・随伴性が生じるので、抵当権と同じように、被担保債権について免責的債務引受がされれば、根抵当権の債務者も変更されます。
元本確定後に免責債務引受がされるということは、
甲債権につきBからCに免責債務引受がされると
というものです。元本確定前のみ可能な債務者変更とは別の話になります。
以下、やや強引な例え話ですが、
「パンダのぬいぐるみ」と「コグマのぬいぐるみ」が売っていました。パンダは売り場A、コグマは売り場Bに売っています。
子供に「どっちが欲しい?」と聞いたところ、最初は「パンダ!」と売り場Aに行きましたが、「やっぱりコグマがいい!」と売り場Bに行きました。
これは、元本確定前の債務者変更(A→B)と同じです。「やっぱりパンダはやめて、コグマにする」というものです。
一方、子供が「パンダ!パンダに決めた!」と売り場Aに行きましたが、パンダの売り場がBに移動してしまったので、子供はパンダを追いかけて売り場Bに行きました。これは、元本確定後の債務者変更(A→B)と同じです。「パンダに決めたから、パンダを追いかける」というものです。
「売り場Aから売り場Bに行った」のは同じでも、「パンダをやめてコグマにした」のか、「パンダを追いかけて行った」のかでは全く別の話になります。
「元本確定=パンダに確定」というイメージです。
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