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難易度が乱高下する不登法・択一 ~今後の対策Q&A~

昨年度の本試験と今年度の本試験を受験された方の多くは、午後の部の不動産登記法の択一式の難易度の落差を肌で感じたかもしれません。昨年度の本試験は、過去未出の問題・長文の問題・変形式の問題が多く非常に難しかったのに対し、今年度の本試験は、過去問知識やその周辺知識を問う問題・短文でシンプルな問題が多く、複雑な変形式の問題がほぼなかったため、体感としてもかなり解きやすいものだったはずです。

例年、午後の部の基準点に大きく影響するのが不登法・択一です。実際、不登法・択一の難易度が高かった昨年度の午後の部の基準点は過去最低タイの66点(22問分)、不登法・択一の難易度が低かった今年度の午後の部の基準点は過去5年間で最高の75点(25問分)でした。問題数が多く、難易度によって解くのに要する時間やエネルギーも変わってくるため、記述式の出来にも少なからず影響してくると思われます。

難易度のふり幅が大きい不登法・択一には、少なからず翻弄され不安を感じるのが受験生の自然な心理だと思います。昨年度のように高難度の問題を経験すると「知識の量をもっと増やしていかないと対応できないのではないだろうか…」と不安になり、今年のように比較的シンプルな問題を経験すると「これから基準点がどんどん上がっていくのではないだろうか…」と不安になるかもしれません。

そこで今回は、近年の不登法・択一の出題傾向をふまえた来年度に向けてのベストな対策について、教材制作者の観点からQ&A方式でお伝えしていきます。

Q:来年の不登法・択一の予想難易度は?
A:わかりません。昨年度と今年度だけを比較すると難易度の差は大きいですが、過去の本試験の出題傾向に必ずしも「難→易→難→易」の規則性が見出されるわけではありません。ただ、今年度よりさらに易化…という可能性は低いと考えています。

Q:過去未出の知識のカバーは必要?
A:一定程度、必要です。ただし、闇雲に知識の幅を広げようとすることは間違いなく逆効果になるので禁物です。過去問知識以外の知識をインプットする際には、①対象と②優先順位を意識しましょう。まず①対象ですが、「近時の改正点」及び「近時の先例」は、過去未出の知識として出題可能性が高い分野といえます。また、過去問の「周辺知識」つまり過去問で問われている知識の関連知識も、意識して押さえると良いポイントといえるでしょう。この点、択一実戦力養成答練や公開模試では、こうした知識をカバーするのに役立つ問題や表が提供されますので活用できます。次に②優先順位ですが、厳選過去問集に掲載されている過去問知識をはじめとする、いわゆる「核となる知識」をしっかり固めることが最優先です。次に「近時の改正点」その次に「近時の先例」や過去問の「周辺知識」という優先順位で、可処分時間や自分自身のインプットの進度に応じて、どこまで幅を広げていくか判断していくのが良いと思います。

Q:変形式の問題の対策は必要?
A:必要です。今年度は登記記録等の複雑な出題形式の問題がほとんどありませんでしたが、過去数年の傾向で見るならば、変形式の問題や長文問題が多いのが不登法・択一の特徴といえます。問われている知識はAランクであっても形式面での揺さぶりによって正答率が下がることが往々にしてあるので、解けるはずの問題を取りこぼさないよう、変形式の問題に対してしっかり対策しておくことは大切と考えます。択一実戦力養成答練や公開模試では、登記記録問題、表形式の問題、対話型問題など、実戦力を養うのに役立つバラエティ豊かな変形式の問題を今年も積極的に提供していく予定です。

Q:難易度の乱高下に翻弄されないための心構えは?
A:相対試験ですから、難易度が高ければ基準点は下がり、難易度が低ければ基準点は上がるというごく当たり前の事実を忘れないようにしましょう。この試験の対策としては、「みんながやっていないことをやる」必要はありません。むしろ、「みんながやっていることを徹底的にやり抜く」姿勢が大切です。そうすることで、昨年度のように難しい知識がたくさん出題されても、「これだけやってきた自分が知らないならみんな知らないだろう」と思えるくらいの心の余裕が生まれ、準備してきた知識を生かせる問題を冷静に見極めて対処することができます。また、今年度のように比較的解きやすい問題が多く出題された場合には、いわゆるAランク及びB+ランクの問題を取りこぼすことなく着実に得点を重ねることができるでしょう。

今回は不登法・択一に絞ってお話ししました。全科目に共通して言えることですが、伊藤塾では、毎年の本試験問題の出題傾向や難易度の推移を分析し、試験対策の方向性やテキストの情報量について検討しています。こうした分析・検討を経て提供されている講義や教材を信頼してフル活用することが、まさに「みんながやっていることを徹底的にやり抜く」ことであり、合格への最短ルートになるはずです。来年は特に、民法及び不動産登記法の改正もありますので、講座を上手に活用してしっかり対策していきましょう。

不動産登記法 制作担当 高野いづみ


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