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北谷馨の質問知恵袋 「即時取得」に関する質問

今回は、「即時取得」に関する質問です。

『Aが、その所有する動産甲をBに譲渡し,占有改定による引渡しをした場合であっても,その後,Aが無権利者であることについて善意無過失のCがAから動産甲を譲り受け,現実の引渡しを受けたときは,Cは,Bに対し,動産甲の所有権を主張することができる。』という問題で、正解は「正しい」でした。動産の二重譲渡があった場合、占有改定も178条による「引渡し」に当たるので、先に対抗要件を備えたBが勝つのではないでしょうか。

やや乱暴な言い方をすれば、即時取得は「遅い者勝ち」になります。最後に即時取得した者が勝つからです。
 
まずAからBに譲渡があり、Bは占有改定による引渡しよって178条の対抗要件も具備するので、Bは完全に所有者となり、Aは全くの無権利者となります。
 
その後、全くの無権利者になったAから、善意無過失のCが買い受けて現実の引渡しを受けた場合は、Cに即時取得が成立するので、所有者はCになります。反射的にBは所有権を失います。
 
そもそも即時取得とは、全くの無権利者から買った人が所有権を取得できる(結果、真の所有者が所有権を失ってしまう)という制度です。
Bとしては、それを阻止したければ早く現実の占有をして自分で保管しておくべきだったのです。
 
「AからB」と「AからC」の二重譲渡があった場合の組み合わせを整理します。

①AからBに占有改定による引渡しをした後、AからCに占有改定による引渡しをした。
⇒二重譲渡の対抗要件でBの勝ち。Cは占有改定なので即時取得できない。よって所有者はB。

②AからBに占有改定による引渡しをした後、AからCに現実の引渡しをした。
⇒二重譲渡の対抗要件でBの勝ち。しかしその後Cが即時取得する。よって所有者はC。

③AからBに現実の引渡しがあった。Aは占有を失うのでその後にCは即時取得することはない。
⇒よって所有者はB。

この①~③から分かるとおり、「占有改定」でも対抗要件を具備することはできるものの、即時取得のリスクを考えれば現実の引渡しを受けるまでは安心できない、ということになります。
 
なお冒頭の事例において、Bは所有権を取得できなくなりますが、Aに対して、履行不能により契約の解除をしたり、損害賠償請求をしたりすることはできます。


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