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【記述式】申請の個数の判断-1個の法律関係を数個の原因関係と評価する例外②(蛭町講師)

今回は以下の記事の続きとして,「申請の個数の判断-1個の法律関係を数個の原因関係と評価する例外」の「混同」を取り扱う。

混 同

【1】担保権者の所有権取得

 1個の法律関係を2個の原因関係として評価する例外として混同がある。

 平成11年は,2番抵当権者が合併により設定目的物の所有権を取得した事例である。これにより2番抵当権と設定目的物の所有権が同一人に帰属し混同の要件を満たす。また,先順位抵当権は存在するが,後順位の担保権は存在せず,物に第三者の権利が存在する混同の例外には該当しない。

 その結果,合併による所有権の移転の原因関係だけでなく,2番抵当権に混同による抹消登記の原因関係と併せて2個の原因関係が判断できることになる。

 平成18年は,3番抵当権者が遺産分割による遡及効による相続で設定目的物の所有権を相続で取得した事例である。これにより3番抵当権と設定目的物の所有権が同一人に帰属し混同の要件を満たす。また,先順位担保権が存在するが後順位担保権者は存在しないため,物に第三者の権利が存在する混同例外には該当しない。

 その結果,相続による所有権の移転の原因関係だけでなく,3番抵当権に混同による抹消登記の原因関係と併せて2個の原因関係が判断できることになる。

81・平18-甲地の連件1 遺産分割による相続を原因とする所有権移転登記
82・平18-甲地の連件2 混同による3番抵当権抹消登記

【2】設定目的物の共有者の担保権取得

 平成9年は,設定目的物の共有者ABのうちAが1番抵当権者Xの相続により1番抵当権を取得する事例である。この場合,設定目的物の共有者Aの共有持分権と1番抵当権が同一人に帰属することになり混同の要件を満たす。また,同順位又は後順位担保権者は存在しないため,物に第三者の権利が存在する混同例外には該当しない。

 その結果,相続が1番抵当権のXからAへの移転登記の原因関係となるだけでなく,混同によりA持分について1番抵当権が消滅するため,及ぼさない変更登記の原因関係と併せて2個の原因関係が判断できることになる。

52・平9-E死亡の連件3 法定相続による1番抵当権移転登記
53・平9-E死亡の連件4 混同による1番抵当権の及ぼさない変更登記

【3】まとめ

 過去問をみる限り,担保権者が所有権を取得するパターンだけでなく,所有者が担保権を取得するパターンがあるため,所有権の移転の場合でも所有権以外の権利の移転の場合でも混同の有無のチェックが必須となる。なお,取得原因は,相続,合併が多く,特に相続,合併の法律関係では混同のチェックが必須となる。

 また,混同例外となる転抵当権のような他物権への第三者の権利だけでなく,後順位担保権の存在が物に対する第三者の権利として混同例外となる点に注意する。

 ちなみに,未出題だが,設定目的物の所有者Aが1番共有根抵当権XYの権利のうちXの共有権利を取得した場合,所有権と1番共有根抵当権の共有者Xの権利が同一人Aに帰属するが,1番根抵当権の他の共有者Yの存在が物についての第三者の権利として混同例外となるため,混同による1番共有根抵当権のXの権利の消滅登記を申請することはできない(房村精一・登記先例解説集376P27)。

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