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令和3年度本試験の不動産登記法を振り返る①

みなさん、こんにちは。伊藤塾講師の髙橋智宏です。

今回は、令和3年度本試験の不動産登記法の振返りとして、私なりの分析をお伝えします。難易度等に関しては,『本試験問題徹底分析講義』で各講師から話がありましたので,私からは今年の試験の特徴及び近年の試験の傾向から導かれる来年の試験に向けた勉強法を重点的にお話しします。

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【1】 長文の問題への対応

近年の不動産登記法の問題は長文になる傾向にありますが,今年もその傾向が表れていた問題といえます(e.g.第13問「登記の嘱託」第22問「根抵当権の元本確定の登記」)。今回の記事は昨年の記事と同趣旨になりますが,今年の本試験の素材をもとにお話ししていきます。

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問題文が長文になると難しくなるのが次の2点です。

① 問題文を読むのに時間が掛かる
② 論点の把握が難しくなる

【2】問題文を読むのに時間が掛かる

問題文が長ければ読むのに時間が掛かるので,読んだ上で判断する時間,又は多めに肢を検討する時間が削られてしまいます。その結果,ミスが生じやすくなり、点数が取りにくくなります。実際,今年の午後の部の択一式を解くのに70分又はそれ以上かかったという方も多いです。

問題文の読み取りを早くするために重要なのは、論点判断の材料となるキーワードに素早く着目することです。例として問題文の抜粋を用意しました。キーワードを赤字にしましたので、そこに注目してください。

■ 第22問(根抵当権の元本確定の登記)イ■

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〔解説〕根抵当権者が抵当不動産に対する第三者の申立てに基づく競売手続開始による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したときは,当該根抵当権の担保すべき元本は確定する(民398条の20第1項3号)。そして,根抵当権に転根抵当権が設定されている場合における当該転根抵当権者は,民法398条の20第1項3号の第三者に当たる(平9.7.31民三1301号回答)。この場合,差押えがあったことを根抵当権者が知った時から2週間が経過していることは登記記録上明らかとはならないため,元本確定後でなければすることのできない登記を申請するときは,その前提として,元本確定の登記を申請しなければならない(同先例)。 

もちろん,キーワード以外を読まないわけではありませんが,キーワードに着目をした上でメリハリをつけて読むことで,問題文を読むスピードが格段に上がります。

そして,このようにキーワードに着目できるようにするためには,普段の学習から論点のポイントとなるキーワードを押さえたうえで知識をインプットする必要があります。

具体的には,普段テキストに目を通す際には、論点のポイントとなるキーワードに下線や丸を付け,そこに注目しながら読むようにしましょう。そうすることで,自然とキーワードに着目する癖をつけることができます。

【3】論点の把握が難しくなる

問題文が長文となると、文章・事例が複雑になり、何の論点が問われているのかを把握するのが難しくなります。次のように、実際に解説を読めばすぐ分かる知識であるものの,現場で判断に時間が掛かってしまったものもあったのではないでしょうか。

■ 第17問(登記識別情報の通知)イ■

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〔解説〕抹消回復の登記が完了した場合,申請人に対して登記識別情報は通知されない(不動産登記実務Q&A.Q70④参照)。当該申請人は,抹消回復の登記により,新たに登記名義人となるわけではないからである(不登21条本文参照)。 

このような問題に対応できるようになるためには、テキストの抽象的な記載から問題文の具体的な記載に変換して判断する、いわば「知識の変換力」が必要となります

そして、「知識の変換力」は、テキストの抽象的な記載と問題文の具体的な記載の行き来により、身に着けることができます。

すなわち,問題演習の際にマメにテキストに戻ることが大事です。問題演習の際にテキストに戻らない場合,個別的な問われ方を押さえているだけで,本試験で角度を変えて問われたときに対応するのが難しくなるため,なるべくテキストに戻るようにしましょう(時間のない方は,最低限,間違えた問題だけでも戻るようにしましょう)。

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