見出し画像

法定地上権の成立 ~1番抵当権と2番抵当権がある場合~

今回のテーマは「法定地上権の成立」です。
特に、「1番抵当権と2番抵当権が設定されている場合、どちらを基準に判断するのか」という問題について検討します。
法定地上権の「着眼点」を理解する良い素材となるからです。

法定地上権の成立要件で、特に重要なものは、

① 抵当権設定時に土地上に建物がある
② 抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一人である

という2点です。

ほとんどのケースでは、上記①②の要件を満たしているかどうかだけで結論は出ます。

やや複雑になってくるのは、「建物が再築されるパターン」と「2番抵当権が登場するパターン」ですが、今回は法定地上権の理解を深めるために、「2番抵当権が登場するパターン」について検討します。

法定地上権を理解するうえで重要な視点は、

・法定地上権が成立すると土地に不利である(土地の価値は下がる)。
・法定地上権が成立すると建物に有利である(建物の価値は上がる)。

という点です。

そうすると、

・土地の抵当権者は、法定地上権が成立すると不利
 → 抵当権者に不意打ちで成立するのはNG
・建物の抵当権者は、法定地上権が成立すると有利
 → 抵当権者の予想外に成立してもOK

となります。

この観点から、2つの事例を検討します。

【事例1】

『土地』に1番抵当権が設定された時点では、土地と建物は別人所有だったが、2番抵当権が設定された時点では、同一人所有になっていた。

この場合、①1番抵当権を基準に法定地上権は成立しないと考えるのか、それとも②2番抵当権を基準に法定地上権は成立すると考えるのか、という問題が生じます。
1番抵当権を設定した時点では、法定地上権の成立要件は満たしていなかったので、1番抵当権者としては、「法定地上権は成立しない」と思っていたはずです。それが、2番抵当権を基準に「法定地上権は成立する」となると、1番抵当権者にとっては予想外の話になります。ここで、上記の
・土地の抵当権者は、法定地上権が成立すると不利
 → 抵当権者に不意打ちで成立するのはNG
という考え方を使うと、今回は「土地の抵当権」で、「1番抵当権者に不意打ち」になってしまうため、結論は「法定地上権は成立しない」となります。

【事例2】

『建物』に1番抵当権が設定された時点では、土地と建物は別人所有だったが、2番抵当権が設定された時点では、同一人所有になっていた。

この場合、①1番抵当権を基準に法定地上権は成立しないと考えるのか、それとも②2番抵当権を基準に法定地上権は成立すると考えるのか、という問題が生じます。
事例1と同様に、「法定地上権は成立する」となると、1番抵当権者にとっては予想外の話になります。ここで、上記の
・建物の抵当権者は、法定地上権が成立すると有利
 → 抵当権者の予想外に成立してもOK
という考え方を使うと、今回は「建物の抵当権」で、「1番抵当権者にとって予想外」となっても問題ないため、結論は「法定地上権は成立する」となります。

上記の考え方をしっかり理解しておくと、法定地上権はすんなり頭に入ってくるはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?