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北谷馨の質問知恵袋 「債務の承認」に関する質問

今回は、「債務の承認」に関する質問です。

Q:「主債務者が債務の承認をした場合」と、「保証人が債務の承認をした場合」の、効力が及ぶ範囲がよく分かりません。

まず、時効完成「前」と「後」と分ける必要があります。
消滅時効の期間が10年だとすると、10年経過する「前」に承諾した場合と、10年経過した「後」に承認した場合の違いです。
 
時効完成「前」に債務の承認をすれば、時効の「更新」になります(152条)。
時効完成「後」に債務の承認をすれば、「時効の利益の放棄」になります(146条)。
これを出発点として押さえてください。
 
・時効の「更新」としての承認 = 時効完成「前」の承認

主債務者がした場合 → 保証人にも更新の効力が及びます(付従性)。
保証人がした場合 → 主債務者には更新の効力は及びません(相対効)。

・「時効の利益の放棄」としての承認=時効完成「後」の承認

主債務者がした場合 → 保証人には時効の利益の放棄の効力は及びません(相対効)。
保証人がした場合 → 主債務者には時効の利益の放棄の効力は及びません(相対効)。

時効の利益の放棄は徹底した相対効になっており、主債務者がした場合でも、保証人には及びません。
 
なお、時効完成後でも、「時効完成を知らずになされた債務の承認」は、「時効の利益の放棄」には当たりません。知らないものを放棄することはできないからです。ただしこの場合でも、「信義則」に照らし、債務者は時効の援用をすることが許されなくなります(最判昭41.4.20)。
これも、主債務者がした場合、保証人がした場合のいずれも、相対効です。
 
ついでに、「時効の援用の効果」も確認しておきましょう。

主債務者が消滅時効を援用した場合 → 保証人の保証債務も消滅する(付従性)。
保証人が消滅時効を援用した場合 →主債務者の主債務は消滅しない(相対効)。


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