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北谷馨の質問知恵袋 「子の氏の変更」に関する質問

今回は、「子の氏の変更」に関する質問です。

Q:子の氏の変更には原則として家庭裁判所の許可が必要になりますが、これが不要になる民法791条2項が具体的にどのようなケースにおいて適用されるのか分かりません。

まず、子の氏の変更に関する民法791条1項、2項を確認します。

第791条
1項 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2項 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

1項は子が「父又は母」と氏を異にする場合なので、父が鈴木・母が山田で、子が山田であるような場合です。
2項は子が「(父又は母が氏をあらためたことにより)父母と氏を異にする場合」であり、父も母も鈴木だが、子は山田という場合です。この場合、「父母の婚姻中に限り」家庭裁判所の許可を得ずに子の氏を鈴木に変えることができます。ここでいう「父母の婚姻中」とは、「子の両親を夫婦とする婚姻中」のことです。他の人と婚姻していても関係ありません。
 
例えば、山田花子と鈴木一郎(未婚)の間に子が生まれ、その子は山田太郎だとします。父の鈴木一郎は山田太郎を認知しましたが、太郎の氏は山田のままです。
その後、山田花子は鈴木一郎と婚姻し、鈴木の氏を称することになりました(山田花子は鈴木花子になった)。
これだけでは太郎の氏が当然に鈴木になることはなく、山田太郎のままです。
この場合、太郎の両親は婚姻中(花子が妻・一郎が夫である婚姻中)なので、家庭裁判所の許可を得ずに、届出だけで太郎の氏を鈴木に変更することができます。
 
なお、以下の場合は2項は適用されず、家庭裁判所の許可が必要です。
例えば、山田花子と鈴木一郎(未婚)の間に子が生まれ、その子は山田太郎だとします。父の鈴木一郎は山田太郎を認知しましたが、太郎の氏は山田のままです。
その後、山田花子が松本二郎と婚姻し、松本花子になったとします。
この場合、山田太郎は、家庭裁判所の許可を得て、松本太郎になることができます。太郎の両親は婚姻中ではないので(花子が妻・一郎が夫である婚姻ではない)、原則どおり家庭裁判所の許可が必要になります。
2項(家庭裁判所の許可不要)が適用されるための「父母の婚姻中」という要件は、「子の両親を夫婦とする婚姻中」のことである点に注意してください。父と母が婚姻中であれば、両親で氏の取り合いになるという対立は生じないので、家庭裁判所の許可は不要、という趣旨になります。


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