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株主総会で決議「できること」と「すべきこと」

今回のタイトルは、株主総会で決議「できること」と「すべきこと」としました。もちろん、細かいことは個々に覚えていく必要があるのですが、ざっくりと、どのようなルールになっているのでしょうか。

株主総会の権限については、会社法295条に規定があります。

第295条
1 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

1項は非取締役会設置会社、2項は取締役会設置会社に適用されます。
そうすると、株主総会で決議「できること」は、

非取締役会設置会社 
→ 一切の事項
取締役会設置会社
→ ①会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
②定款で、株主総会決議によると定めた事項

となります。

また、3項より、株主総会で決議「すべきこと」は、

会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項

となります。
ここまでとまとめると、

非取締役会設置会社
・会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
 → 株主総会でしか決議できない。
・それ以外の事項
 → 株主総会で決議しても良い。

取締役会設置会社
・会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
 → 株主総会でしか決議できない。
・それ以外の事項
 → 定款で定めれば、株主総会で決議しても良い。

となります。意外と、シンプルにまとまりましたね。
非取締役会設置会社では、株主総会は万能機関であり、
取締役会設置会社では、株主総会は重要な局面でのみ登場する、
というイメージを持つといいでしょう。

更に、もうひとつルールがあります。
・会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
 → 株主総会でしか決議できない
というルールは、「定款で別段の定めができる」旨の規定が個別にあれば、定款の定めにより、株主総会以外の機関によることもできます。

第186条 
1 株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。(以下略)
2 (略)
3 第1項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

3項を見ると、非取締役会設置会社では株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議によらなければならない旨が規定されています。
 非取締役会設置会社では、「株主総会」と規定されているので、本来であれば、必ず株主総会決議によらなければならないはずです。しかし、「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」という個別の規定があるため、定款の定めによって、他の機関(取締役の過半数の決定など)によることができます。

もうひとつ、株式の分割に関する183条を見てみましょう。

第183条
1 株式会社は、株式の分割をすることができる。
2 株式会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。(以下略)

株式無償割当てに関する186条と異なり、「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。」という規定はありません。
 よって、非取締役会設置会社では、「株主総会」という規定がある以上、必ず株主総会決議によらなければなりません。

 なお、取締役会設置会社では、「取締役会」と規定されていますが、これは、定款の定めによって株主総会決議とすることはできるでしょうか。

 これは、「できる」が正解です。「あれ、できるの?」と思ってしまった方は、上で見た295条2項の話を思い出しましょう。取締役会設置会社では、「定款で、株主総会決議によると定めた事項」も決議できるので、株式の分割も、個別の規定がなくても定款の定めにより株主総会で決議することができます。

以上の話をすべてまとめると、

非取締役会設置会社
・会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
 → 株主総会でしか決議できない。
 → ただし、個別に規定があれば定款で別段の定め可。 e.g.186Ⅲ但
・それ以外の事項
 → 株主総会で決議しても良い。

取締役会設置会社
・会社法で、株主総会決議による旨の規定がある事項
 → 株主総会でしか決議できない。
 → ただし、個別に規定があれば定款で別段の定め可。
・それ以外の事項
 → 定款で定めれば、株主総会で決議しても良い。

となります。

この大枠を頭に入れて個々の規定を学習すると、理解が深まるはずです。


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