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「差がつく」条文 ~意思表示の効力~

今回は、「条文のとおり」の知識の確認です。

問題:Aは、Bに対して申込みの通知を発し、それがBに到達した後に死亡した。Bが承諾の通知を発する前にAの死亡の事実を知っていたときは、申込みは効力を有しない。

正解:正しい。

この問題について、「原則」「例外」が頭に浮かび、「例外」の要件をあてはめて「正しい」と導けたでしょうか。この問題の事例と結論だけ覚えたとしても、いくらでも時系列を変えて出題できるので応用が効きません。どういうルールが規定されているかを確認しましょう。

民法97条3項
 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

民法526条
 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

97条3項が原則で、526条が「申込み」の場合における例外規定となります。
原則として、意思表示の通知を発した後に表意者が死亡しても、意思表示は有効です(97条3項)。この原則で考えると、本問のAの意思表示(申込み)は「有効」となりそうです。しかし、「申込み」については526条に特則がありますので、これを検討する必要があります。

526条より、
①Aが「申込みの通知を発した後」に死亡しており(「到達前」には限っていない)、
②Bが「承諾の通知を発するまでにA死亡の事実を知った」ときには、
③Aの申込みは効力を有しない
となります。
 上記を踏まえて本問を検討すると、
「①Aは、Bに対して申込みの通知を発し、それがBに到達した後に死亡した。②Bが承諾の通知を発する前にAの死亡の事実を知っていたときは、③申込みは効力を有しない。」
とあり、「正しい」となります。

 もうひとつ、確認です。

「Aは、Bに対して申込みの通知を発し、それがBに到達した後に後見開始の審判を受けた。Bは、承諾の通知を発する前に、当該事実を知った。」
この場合、
ア 申込みは効力を有しない。
イ 申込みは取り消すことができる。

アイのどちらでしょうか。
正解は「ア 申込みは効力を有しない。」です。526条は「行為能力の制限を受けた場合」も含めて「その申込みは、その効力を有しない。」と規定しているからです。

単なる条文知識ではありますが、「差がつく」条文と言えます。


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