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事業年度の変更で役員は退任する?しない?~白熱教室・答案構成力養成答練(商業登記法)ライブ講義の片隅で(後半戦)

こんにちは。
記述式答案構成力養成答練(商業登記法)の問題作成者の杉山です。

先日(3月30日〔木〕)、記述式答案構成力養成答練(商業登記法)の東京校での講義全6回が終了したところです。私も、問題作成者として、講義終了後の教室で受講生の質問受けをしていました。

今回は、前回に引き続き、講義の質問受けでのある受講生からの質問について解説をしてみようと思います。

【質問】
事業年度の変更によって役員が退任する場合と退任しない場合とがありますが、どのような考え方で役員の退任の有無を判断すればよいのでしょうか。

【回答】
記述式問題を解く際には、役員の任期の計算を正確に行うことが絶対的に必要となります。特に、近年の本試験の記述式問題においては、役員の変更(機関設置等の会社状態の変更を含む。)を正確に判断することができれば、基準点を下回ることのない答案に限りなく近づくことが想定されますので、その意味においても、役員の任期の計算の重要度は増していると言えます。

そして、役員の任期の計算のうちでも、事業年度を変更した場合の役員の任期の計算は、特に苦手としている受験生が多く、質問が寄せられることが多い事項です。そこで、今回は、事業年度を変更した場合の役員の任期の計算を解説してみたいと思います。

まず、原則的な考え方は、以下の①から③までのとおりとなります。
①既に任期が満了している役員については、事業年度の変更の影響は受けない(すなわち、任期満了の日が変更することはない)。
②任期中の役員の任期を「変更後の事業年度に従って」再計算する。
③上記②の任期の計算の結果、過去において任期が満了することとなる役員については、事業年度を変更する定款の変更の効力発生日に任期が満了する。

以上の①から③までを念頭に置いた上で、以下のとおり、【登記記録】の株式会社に【変更等】があった場合の(1)から(4)における監査役カパイチの任期を計算してみます。

【登記記録】
役員に関する事項 監査役 カパイチ (   ※   )
【変更等】
・令和5年3月30日開催の定時株主総会において、事業年度を「毎年1月1日から同年12月31日まで」から「毎年4月1日から翌年3月31日まで」と変更し、変更後の最初の事業年度を「令和5年1月1日から令和6年3月31日まで」と変更しました。
→この事業年度の変更によって、前後3期の事業年度は、「令和4年1月1日から同年12月31日まで」、「令和5年1月1日から令和6年3月31日まで」及び「令和6年4月1日から令和7年3月31日まで」となります。
・過去の定時株主総会は、毎年3月30日に開催されていました。
・株式会社の定款には、定時株主総会の開催時期を「事業年度の末日から3か月以内」とする定めはあったが、その他には会社法の規定と異なる別段の規定はありませんでした。

(1)(※)が「平成30年3月30日就任」である場合⇒令和4年3月30日退任
監査役カパイチは、令和4年3月30日開催の定時株主総会の終結時において既に任期が満了しているため、監査役の権利義務を有するかどうかにかかわらず、事業年度の変更によって任期満了日が変更することはありません。

(2)(※)が「平成31年3月30日就任」である場合⇒令和5年3月30日退任
監査役カパイチは、令和5年3月30日の事業年度の変更の直前において任期が満了していないため、変更後の事業年度によって任期満了日を計算します。
→起算日は「平成31年3月30日」、4年後の応当日は「令和5年3月30日」
→「令和5年3月30日」から見て直近に終了している事業年度の末日は「令和4年12月31日」
→当該事業年度に関する定時株主総会は「令和5年3月30日」
→したがって、監査役カパイチは、「令和5年3月30日」開催の定時株主総会の終結時において、任期満了により退任することとなります。

(3)(※)が「令和2年3月30日就任」である場合⇒令和5年3月30日退任
監査役カパイチは、令和5年3月30日の事業年度の変更の直前において任期が満了していないため、変更後の事業年度によって任期満了日を計算します。
→起算日は「令和2年3月30日」、4年後の応当日は「令和6年3月30日」
→「令和6年3月30日」から見て直近に終了している事業年度の末日は「令和4年12月31日」(変更後の最初の事業年度〔令和5年1月1日から令和6年3月31日〕はまだ終了していない点に注意)
→当該事業年度に関する定時株主総会は「令和5年3月30日」
→したがって、監査役カパイチは、「令和5年3月30日」開催の定時株主総会の終結時において、任期満了により退任することとなります。

(4)(※)が「令和2年9月30日就任」である場合⇒令和6年6月頃退任
監査役カパイチは、令和5年3月30日の事業年度の変更の直前において任期が満了していないため、変更後の事業年度によって任期満了日を計算します。
→起算日は「令和2年9月30日」、4年後の応当日は「令和6年9月30日」
→「令和6年9月30日」から見て直近に終了している事業年度の末日は「令和6年3月31日」(変更後の最初の事業年度〔令和5年1月1日から令和6年3月31日〕は終了している点に注意)
→当該事業年度に関する定時株主総会は「令和6年6月頃」
→したがって、監査役カパイチは、「令和6年6月頃」開催の定時株主総会の終結時において、任期満了により退任する予定となります。

さて、いかがでしょうか。十分に理解できない場合には、まず上記の(1)から(4)までの各場合の結論を確認した上で、その結論に至るまでに思考の過程を再現することができるように繰り返し復習してみてください(さらに、本答練における該当の問題の復習もしてみてください)。事業年度の変更についても、「習うより慣れろ」という格言は妥当するものと考えます。

最後となりましたが、現在、いわゆる「超直前期」に入っています。受験生各位には、今年7月2日の本試験に万全の態勢で臨むことができるよう最善を尽くし、残り3か月を悔いなく過ごされることを祈念しております。

なお、本答練の第4回から第6回までの問題について本答練の受講生からの質問に北谷講師及び問題作成者が回答する「ZOOM質問回」を令和5年4月8日(土曜日)15時から開催します。現時点(令和5年4月4日)において、参加者を募集しておりますので、本答練の第4回から第6回までの問題について質問のある受講生は、奮ってご参加ください。

【前回記事】はこちら
「損害を及ぼすおそれ」はある?ない?~白熱教室・答案構成力養成答練(商業登記法)ライブ講義の片隅で


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