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北谷馨の質問知恵袋 「住所の記載の要否」に関する質問

今回は、「住所の記載の要否」に関する質問です。

Q:取締役等の就任承諾書として株主総会議事録を援用するにあたって、議事録に住所の記載がされていることを要する場合とそうでない場合があります。その判断方法がよくわかりません。

就任承諾書に住所の記載が必要になる場合、株主総会議事録を就任承諾書として援用するためには、議事録に住所が記載されていることを要します。
就任承諾書に住所の記載が必要になるのは、原則として「本人確認証明書」を添付する場合です。
 
先に結論を記載します。
 
・本人確認証明書を添付する場合
→就任承諾書に住所の記載が必要。
→住所の記載がないと議事録を就任承諾書として援用できない。
 
・「再任」を理由に本人確認証明書の添付を省略する場合
→就任承諾書に住所の記載は不要。
→住所の記載がなくても議事録を就任承諾書として援用できる。
 
・「印鑑証明書添付」を理由に本人確認証明書の添付を省略する場合
→就任承諾書に住所の記載が必要。
→住所の記載がないと議事録を就任承諾書として援用できない。
 
・そもそも本人確認書の添付が不要である場合(会計参与の就任など)
→就任承諾書に住所の記載は不要。
→住所の記載がなくても議事録を就任承諾書として援用できる。
 
「本人確認証明書」とは、文字どおり本人を確認するための証明書であり、「就任承諾書に記載された氏名・住所」を確認する証明書になります。
具体的には住民票の写しや運転免許証の写しなどを添付します。
この「本人確認証明書」は、取締役・監査役・執行役の就任登記において必要になります。
 
そして、「就任承諾書に記載された氏名・住所」を証明するのが本人確認証明書ということは、逆に言えば、本人確認証明書を添付する場合は、就任承諾書に氏名のほか住所の記載も必要になるということです。
就任承諾書に住所が記載されていなければ、「就任承諾書に記載された住所を証明する」ということも不可能なので、前提として住所の記載が必要になるのです。
 
次に、「本人確認証明書」は「①再任の場合」と「②印鑑証明書を添付する場合」は添付不要になります。
添付不要となる例外は①②の2つありますが、この2つで、住所の記載の要否が異なる点に注意が必要です。
 
「①再任の場合」は、既にその者の本人確認をしているので、改めて確認する必要はないため、本人確認証明書の添付は不要になります。
この場合、もはや本人確認は行わないので、就任承諾書に住所が記載されている必要はありません。
よって、この場合は、議事録に住所の記載がなくても、就任承諾書として議事録を援用することができます。
 
「②印鑑証明書を添付する場合」も、本人確認証明書の添付は不要になりますが、これは、本人確認を行わないという趣旨ではなく、印鑑証明書に氏名と住所が記載されているため、印鑑証明書が本人確認証明書の役割も兼ねることになるという趣旨です。
「印鑑証明書」を添付することを理由に「本人確認証明書」の添付を省略する場合は、本人確認自体は行うので、就任承諾書に氏名のほか住所の記載がされていることを要します。
就任承諾書に記載された氏名・住所が正しいことを印鑑証明書で確認することになります。
よって、この場合は、議事録に住所の記載がなければ、就任承諾書として議事録を援用することはできません。
 
最後に、会計参与や会計監査人の就任など、そもそも本人確認証明書の添付を要しない場合は、就任承諾書に住所の記載は要しないので、議事録に住所の記載がなくても、就任承諾書として議事録を援用することができます。


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