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きっと忘れてしまう彼女の代わりに

娘が通う保育園の連絡帳。 
 
B5サイズの、小さな連絡帳。 
      
左半分には食事の内容や睡眠の状況を記入し、右半分には、家庭からのコメントと先生からのコメントを記入する欄がある。 
 
「保育園より」と書かれたその小さな欄にはいつも、日中の娘の様子が丁寧に書かれている。お友達との微笑ましいやりとりや、ぷっと吹き出してしまう言動。先生の描写がすごく上手だからか、私の頭の中で容易に再現される。
 
この欄を読むのが、一日の小さな楽しみ。  
 
 
◇    
 
 
娘が入園したのは生後9ヶ月のとき。やっぱり最初の頃は毎朝泣きじゃくっていたけれど、先生たちのおかげですっかり保育園での生活にも慣れ、今のところ「保育園行きたくない」と言うこともない。 
 
けれども担任の先生(4人いる)以外の先生には人見知りを発揮することもあって。先生たちにはすごく申し訳ないのだけど、気分によっては泣き喚くこともある。   
 
で、先日、お昼ごはんのときにたまたま担任の先生以外の先生が娘のお世話係として付いてくれた際、担任の先生がいいと駄々をこね、終いには泣きすぎた勢いで吐き戻してしまったらしい。 
 
担任の先生からその話を聞いた時、吐き戻すほど拒絶するなんて、と、なんだか気まずくて、「なんか……すいません」と私が言うと、「あ、全然大丈夫ですよ〜!」と、そんなことしょっちゅうありますから!とでも言うように笑いながら続けて言った。 
 
「あのとき、トトちゃんの隣に座ったのS先生なんですよ」  
 
衝撃だった。なぜならS先生は、娘が0歳児クラスのときの担任の先生だからだ。 
あんなに毎日日中たくさんの時間を共に過ごして、おむつを替えてもらって、抱っこしてもらって、1年かけて信頼関係を構築した先生のことを、娘は忘れてしまっていたのだ。  
 
泣く。
私がS先生なら、絶対泣く。この子は私のこと忘れちゃったんだ!共に過ごしたあの1年間は!共に笑い合ったあの時間は一体いずこへ!って。  
 
たしかに、私だって一番古い記憶と言えばせいぜい年長さんの頃だ。0、1歳の頃のことなんて覚えていなくてあたりまえだし、きっと先生たちも十分理解していると思う。 
 
だけど、毎朝笑顔で迎えてくれて、たくさん愛情を注いで接してくれていたのを知っていたから、切なすぎた。  
 
 

 
 
保育園の先生方には入園してからずっと助けられている。保育園に入れなかったら、私、終わってた。間違いなく終わってた。
保育園はそのくらい大きな存在。 
 
気づけば3月、もうすぐ進級の時期だ。娘の様子がびっちりと書かれた連絡帳の用紙も、いつのまにかすごい量になってきた。 
 
娘が大きくなったら、見せてあげたいなぁ、この連絡帳。
 
成長して、新しい出会いを重ねていくうちに、先生たちとの時間が記憶の奥底に埋もれてしまうだろうから。
 
自分がどれだけあたたかい人たちに見守られていたのかを、娘は忘れてしまうかもしれないから。 
 
私はずっと、忘れないでいたい。先生たちのあたたかさも、先生たちへの感謝の気持ちも。


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