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泣いた

 私の「妻くんといっしょ」が出た。めがね書林のサイトではすでに売っている。アマゾンは、5月26日発売。予約受付中である。

 この本は、大きく二つのパートに分かれている。「妻くんといっしょ」はnoteに発表した妻くんが出てくる文章を集め、さらに未発表の新作も収録している。「小説といっしょ」は、郵便小説やnoteに発表した小説を集めている。

 小説パートの作品「泣いた」の出だしはこんな感じである。

 私は売れない小説家である。かつて地方の小さな文学賞を取ったことがあり、その気になって、大きな出版社が主催している賞への応募をつづけている。執筆の時間はきちんと取りたいという気持ちがあり、週三でアルバイトを入れているが、いうまでもなく貧乏だ。

 ある日、宅配便で木箱入りの高級メロンが三つアパートに送られてきた。
木箱のなかには便箋に書かれた手紙が入っていた。三十年後の日付が記されている。それにはこう書かれていた。

「ある奇妙な事情によってメロンは絶滅した。若い頃は小説が売れず、ろくに食べられなかった。いまはようやっと売れるようになったが、もはや食べることができないのだ。だから、後悔がないように三十年後の私から三十年前の私に贈る。努力はいつか報われる」

 ありがとう、三十年後の自分、とはもちろん思わなかった。未来の自分が書いたわけではないことを知っていたからである。私がメロン好きなことをわかっている人間がいる。

(続く)

 どうぞよろしくお願いいたします。

 めがね書林のサイト:

アマゾンのサイト:

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