花火

フェスのアオハライド

 これは数年前の話である。

 ロック・フェスに行って思うことは、自分の関心がない出演者の場合は、寝そべっていたり、本を読んでいたり、仲間と雑談をしている観客が多いことだ。
 私は、そうではないが、未知のいいバンドを捜そうという観客は、それほど多くはいない気がする(私の勘違いだったら、ごめんなさい)。
 夜6時。フェスのステージがピークに向かいかけるころ、若い男四人組が輪になって、がっつりと肩を抱き合っていた。
 ちゃらい感じの男たちではない。音楽が好きそうな若者だ。
 肩を震わせて泣いている感じだった。
 隣にいた奥くんに聞くと、さきほどまで、妻くんの隣にいた女の子2人組をナンパしていたという。
 そして、振られた。
 それで、男たちはがっつり肩を組んで、泣いていたようだ。
 「おれたち、最高だよな」
 「お~!!」
 そんな声が聞こえてきそうだった。
 青春だなあ。少女漫画のたとえで申し訳ないが、アオハライドだ。

 小雨が降ってきて、若い男たちは、いつの間にか、いなくなった。

ハピネス3


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