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南洋一郎

 中学生の頃、図書室で、ポプラ社のルパン全集を借りて読んだ。南洋一郎さんが訳している。面白かったが、この版は、正確な訳ではなく、大幅に翻案してあると言う。
 あれから数十年後、気になって南洋一郎さんを調べてみた。1980年、87歳で亡くなっていた。本人も作家だった。戦前は大ベストセラーを出したという。ルパン全集は戦後の仕事だった。
 作家なので、こうすればもっとよくなるというアイデアがあり、変えていったのかもしれないと思う。なかには作者、ルブランの作品を一部取り入れてはいるが、ほぼパスティーシュと言ってもいい巻もあるそうだ。
 戦前、大ベストセラーを出した南さんだが、現在、気軽に読めるのは、ポプラ社のルパン全集のみのようだ。
 南さんにとって、それは、どうなのだろうか。本意なのだろうか。不本意なのだろうか。
 私がパソコンで、南さんの肖像写真を眺めていたら、妻くんがやって来て言った。
「江戸川乱歩!」
 違う、と私は言ったが、時間がたてば業績の評価などどうでもいいことか、と私は思った。

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