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女に裏切られた男の歌

 ムーンライダーズ及び鈴木慶一さんのソロアルバムを昔から聴いている。
 鈴木慶一さんの楽曲には、女に裏切られた男の歌や、愛しすぎて、いくらなんでもこれは男として、あまりに情けないのではないか、と思われるような曲がいくつもある。また、そもそも男女の愛に懐疑的なのではないかと思う。
 これはいくらなんでも情けなさ過ぎるのでは、と思うトップの曲は、「GOD SAVE THE MEN(やさしい骨のない男)」(「SUZUKI白書」(1991)
 こんな歌詞だ。

 君に好きな人がいたっていいんだ
 だってやさしくって骨のない男だぜ

 渋谷で飲んで 君がクライことで
 泣いてそっとたおして
 帰ると言って 車ひろって
 あとで電話したらいなかったね

 大昔のアッシーくんやメッシーくんを思い出させる歌詞だ。
 
 同じくソロアルバム「Records and Memories」(2015)から「Livingとは Lovingとは」。このアルバムのタイトル、「記録と記憶」という言葉がいい。記録と記憶。似ているようで、似ていない。人生は戸籍という記録と経験という人間の記憶でできているのかもしれない。

愛してるのか 愛されているのか
わからなくなる事 何度かあるだろう
そんな時こそ 署名並べて
恋人でいるのが つらく 感じるかい

人の命は短くて 憎み 憎まれ 愛し 愛され 
手を握り 手を離され 抱きしめて ふりほどき 
大事に時を 流してくさ

 深い歌詞だ。
 女に裏切られたとか、愛されていないとか、女を愛したとか、そういうことではなく、人生そのものが歌われている気がする。テーマに沿って選んだというより、いい曲なので選んだ。そう思う。
 続いて、ムーライダーズの名曲から3曲ほど。

「僕はスーパーフライ」(アルバム「青空百景」(1982))
 
 素敵な人の家のまわり
 ウロウロするリアリティー
 それが恋 恋 でも心は
 とてもロンリー

 僕は蠅になって君の
 家のまわりグルグルまわる
 
 その人の名前さえ知らない
 というこのリアリティー
 それが 愛 愛
 だから心はいつもロンリー

「その人の名前さえ知らない」という言葉が出てくるので、これはたまたま見かけた素敵な女をストーカーする歌だと思われる。
 愛にさまよう男を蠅に見立てて、ユーモアを持って歌詞を紡いでいる。
 
「悲しいしらせ」(アルバム「ANIMAL INDEX」(1985))

 一度だけならまだがまんもするが
 こう何度も ウソをつかれちゃかなわねぇ
 海辺に連れてってよ ねぇ兄貴
 気分を変えたいんだ そして
 馬鹿でまぬけな このボンクラ頭 波に洗おう

 悲しい知らせがあるよ 今日 ボクが死んだ

 愛に悩んで、「悲しい知らせがあるよ 今日 ボクが死んだ」
 この歌は、海で亡くなったたこ八郎さんのことを歌ったものだと言われている。兄貴と呼びかけているが、兄貴がたこ八郎さんのことだと思われる。この曲のイントロが私は大好きだ。

「ヴァージニティ」(アルバム「MODERN MUSIC」(1979)

知らなかった いつの間に男がいたなんて
好きなようにするがいいさ
おまえはもう大人
春が過ぎて 夏になる日
ひとすじの光が墜ちる
雨の中を駆け抜けてしまえば
燃え尽きた電話線が
ぷつん音を立てて切れる

秋が過ぎて冬に戻る日
ひとすじの光が走る
心の中も 冬に帰る日
清らかな雷鳴が聞こえる
去りし夏の方から

 よいですね、ムーンライダーズ。
 
 さて、最後は告知です。
 今週末、3月4日(土)夜9時〜、中村総一郎さんのクラブハウス「少し文学的で、ロックで、インディーズぽい音楽時間club」で、上記の曲をかけます。最初に、高橋幸宏さんの追悼曲を2曲。テクノデリックな楽曲を選びました。1時間程度です。お時間があれば、ぜひ。
 クラブハウスは、アプリをスマホにダウンロードすれば、聴けます。


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